日本は「保険大国」と言われる。既婚者に限ればおよそ9割が生命保険、医療保険などに加入している。が、インフレになれば「保険」そのものが「安心」ではなくなる。ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏が解説する。
* * *
将来への備えとして加入する「生命保険」。しかし、受け取る金額が契約時に決まっている保険は「インフレに弱い」と言わざるを得ません。中でも契約期間が長期にわたる商品(終身保険や定期保険など)ほどインフレに弱い。インフレ下では相対的に「お金の価値」が目減りするからです。
仮にインフレ率が2%のまま20年経過し、その時点で2000万円を受け取るとすると、その現在価値は約1340万円に、30年後ならば約1100万円に、と半分近くまで目減りしてしまいます。
新聞などでは、積立金の運用利率によって保険金が増加するためインフレに対応できるとされる「積立利率変動型保険」や「変額保険」を活用すべきというアドバイスを多く目にしますが、保険料が比較的高いことや、特に変額保険では運用次第で受取額が支払った保険料を下回る可能性があるため、あまりおすすめできません。
インフレリスクに備えるポイントは、契約を「減らす」ことと「(契約期間を)短くする」こと。つまり、インフレで目減りする金額を小さくすべく見直すことが必要です。
モデルケースで考えてみます。20年更新型の定期付終身保険に加入している30歳の既婚男性Aさんの場合。主契約は終身保険200万円ですが、定期特約で1800万円の死亡保障があるので、その期間内なら万が一の時には計2000万円が支払われることになります。
他に医療や介護などの特約も付いて保険料は月々2万円程度。そうした契約でまず見直すべきは「定期特約」です。20年としているものを10年に短くする。あるいは定期特約そのものをやめる。Aさんの場合、定期特約をやめると月々の保険料は6000円程度安くなります。
40代以降などこれまでに10~20年以上、保険に加入していた人も、「いまさら」と思わず見直すべきでしょう。
※SAPIO2013年5月号