「夫が浮気している」「リストラに遭った夫が家出した」「別れた男から盗聴器を仕掛けられたかも」……。探偵会社には実にさまざまな相談が舞い込んでくる。愛憎渦巻く人間関係のもつれは、ときに解けないパズルとなって第三者に尾行や調査が委ねられる。
だが、「どんな案件でも証拠を掴むのは簡単で、大切なのは調査報告を終えてからの依頼者のメンタルケアなんです」とカウンセリングの重要性を説くのは、総合探偵社(株)MRの美人ボス、宗万真弓代表だ。年間2000件近い調査で培った莫大な探偵ノウハウの中から、意外に知らない依頼者・対象者の“習性”を挙げてもらった。
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■浮気調査 相談者の約7割が夫婦関係の修復を選ぶ
探偵社に浮気調査の依頼をしてくる人のほとんどは、確かな証拠を握って離婚協議を有利に進めたいと思っています。でも、調査過程で「初めて旦那のことをこんなに愛しているのだと感じました」と涙ながらに語る女性も多い。だからクロの結果が出ても「旦那を愛人女性に取られたくない!」と10人中7人がやり直しに執念を燃やします。そんな奥様自身が浮気をしていたケースもありましたが(笑い)。
■浮気の罪の度合い ラブホテルの出入りは1~2回でアウト
不貞行為は「一定期間継続した肉体関係を結ぶこと」との定義があります。そのため不貞の証拠はホテルや愛人宅の出入りを掴むことが必須。その際、ラブホテルの場合は1~2回押さえれば裁判の証拠になりますが、シティホテルやビジネスホテルは「打ち合わせで使っていた」と言い訳されてしまえば無効になるケースもあるため、3~4回押さえる必要があります。現場を撮られやすい芸能人も滅多にラブホテルに入りませんよね。
■浮気する夫の愛人はたいてい妻より「美しくない」
「どうしてあんなに美人の奥様がいながら……」と思うことはしばしば。なぜ男性がわざわざ容姿の劣る女性を愛人に選ぶのか。家庭では奥様が自分の趣味や子供の教育などに夢中になって全く相手にしてもらえない一方で、失礼ながら自らの容姿に自信のない女性は、恋愛経験が少なく男性に尽くすタイプが多い。そんな女性にふと心と体の隙間を埋められると、つい癒されてしまうのです。ほとんどが身近な職場関係の延長から恋愛に発展するケースです。
■探偵会社も敬遠するストーカー調査の奥深さ
相談件数は年々増えているものの、依頼者と対象者の関係に正当性がない場合、当社では受けないようにしています。「彼氏にストーカーされているので、調査して欲しい」という相談があっても、実は彼氏の素行を見て欲しいがために女性がストーカーをしている――なんてケースがあるからです。本当は悪質なストーカー被害は助けてあげたい。証拠を持って警察に行けば、捜査もスムーズに進んで、殺人に発展するような犯罪を未然に防げるかもしれないからです。今後、ストーカー調査は慎重に見極めていこうと思います。
■行方不明者捜査は、居なくなって1週間が勝負
行方不明者は、居なくなったと気付いたらすぐに調査を開始することが重要です。着手が早ければ早いほど発見率は高くなり、様々なリスクが回避できます。遅くても3日~1週間が大事だと言われています。仕事の不安から家出した夫を探し、5日目に奥様が相談に来られて翌日に発見したケースも、まさに間一髪でした。男性を発見した時、すでに奥様のことも判らない記憶喪失の状態で、バッグの中にロープが入っていたのです。家出人はせっかく見つけても、再び失踪することも多いので、家族も含めて念入りなカウンセリングを心掛けています。捜索場所は居なくなってすぐなら、マンガ喫茶など身近な場所が多い傾向にあります。
■盗聴器調査のほとんどが依頼者の「被害妄想」
テレビ番組でもよく放送される盗聴器の発見現場。当社でも男女関係や職場の利害関係などへの不信感から探して欲しいとの依頼は多いのですが、300件あって1個か2個の盗聴器が見つかればいいほう。ほとんどが依頼者の被害妄想です。いくら「仕掛けられていませんよ」と報告しても、「本当に調べたのですか?」と信じてもらえずに困ることもしばしばあります。それだけ日々のストレスが積み重なっている人が多い証拠です。
【宗万真弓/そうまん・まゆみ】
東京都出身。2003年に総合探偵社(株)MRを設立。依頼者の心のケアを行う業界初のカウンセリング担当制度を導入して急成長を遂げる。2008年には専門的技術を備えた探偵を育成するためMR探偵学校を開校し、学長に就任。ラジオ日本『岡野あつこと宗万真弓の女性相談室』(毎週火曜 夜11時15分~)にパーソナリティとして出演中。(総合探偵社MR http://www.0120128888.com/)
【撮影】山崎力夫