2011年春、焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」でユッケを食べた客から、死者5人を含む181人もの被害者が出た食中毒事件。当初、「生食用として市場に流通している牛肉はありません!」などと逆ギレしていた勘坂康弘元社長(44才)だが、死者が出ると「必ず償います」と土下座した。
あれから2年が経つが、被害者に対する補償は今もまったく進んでいない。
この事件で次男(享年14)を亡くし、自らも被害にあった富山県内の男性A氏(50才)が憤る。
「勘坂は事件から1か月後に一度謝りに来ただけで、補償は支払われていません」
補償が進まないのはなぜか。同店を運営するフーズ・フォーラス社は、被害者への損害賠償額も含めて17億円にのぼる負債を抱える一方で、手元に残っている資金はわずかしかない。そこで、昨年8月には、“殺人ユッケ”の仕入れ先である食肉卸業者・大和屋商店に約3億1000万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたが、この訴訟は異例なものだった。
「フーズ社が被害者にも原告団に加わるよう求めたんです。裁判に勝てば、その賠償金は参加した被害者に分配されます。でも、加害企業と手を組むことになるわけですから、被害者や遺族にとっては複雑です。そのうえ訴訟にかかる費用、数十万円を負担しなければならないわけですから…」(A氏)
結局、ほとんどの被害者がフーズ社の提案を拒否した。
しかも、訴訟自体かなり難航しそうだ。倒産したフーズ社の清算手続きを行っている行政書士・大村安孝氏の話。
「大和屋商店は、警察の調べで食中毒の原因が断定されていないことを理由に、“食中毒の原因はそもそもユッケなのか”という事実関係から争う姿勢。裁判が長引いているので、被害者側が仮に勝訴しても、補償金の分配はかなり先のことになりそうです」
当の勘坂元社長はといえば、被害者への対応は清算人に任せきりで、金沢市内の家賃9万円の賃貸マンションで暮らしている。
「妻子とは別れ、知人の飲食店でアルバイトしながら生活しているようです」(地元紙記者)
※女性セブン2013年5月9・16日号