50代を超えても30代に見えるドクター・南雲吉則先生が“がんの余命”について解説します。南雲先生が探求、体現する“アンチエイジング”にとっていちばん必要なものとは?
* * *
ぼくは乳がんの専門医なので、がんの患者さんたちと余命についてお話ししなければならないこともあるんだけど、もしみなさんがあと3日の命と言われたら、何をしたい?
「おいしいものを食べたい」、「お酒をたくさん飲んで、とことん遊びたい」とか言うんじゃないかな。
実は人間って、3日間くらいの短期間の目標を問われたときには、快楽を求めるんだ。現実から目を背けて、何もかも忘れて快楽に浸りたくなるんだよね。
では次の質問。もし、あと3か月の命だと言われたら何をしたいと思う?
「海外旅行に行きたい」、「温泉に行きたい」、「しばらく会わなかった親戚や友達とも会ってみたい」…。
人間は3か月くらいの中期の目標を求められると、非日常を追求するようになるんだ。日常から逃避して、行ったことのないところで、見たことのないものを見たいと思うんだね。
じゃあ、3番目の質問。もし、あと3年の命と言われたらどうする? 3年間も毎日暴飲暴食したら飽きちゃうよね。3年間、温泉旅行や海外旅行も続かないよね。
そういうのは、たまにあるからいいもので、長期間続けたい“真の目標”ではないんだ。
ぼくが出会った患者さんたちの中で、余命3年と言われた人のほとんどが、こう答えた。
「家族との時間を大切にしたい」、「今の仕事をこのまま続けて、やり遂げたい」。
もっときれいになりたいとか、肌のシミを消したいとかいう人はほとんどいなかったんだ。人間は3年くらいの長期の目標を聞かれると、日常に人生の目標を見いだすんだ。
命が限りないものだと思っていたときには愚痴をこぼしていた家族や仕事が、実はかけがえのないものだったことに、気づくんだね。今のこの人生のためにあなたは今、生きているんだよ。
そう考えたら、家族と一緒に過ごせることに幸せを感じるだろうし、働けることにも幸せを感じられるよね。
※女性セブン2013年5月9・16日号