国内

さかなクン 中学時代にカブトガニ孵化に成功した偉業を語る

さかなクンが魚に興味を持ったのは小学2年生のとき

 春を迎えて新しい学校生活をスタートさせるお子さんを持つ読者も多いだろう。子どもの好奇心を受け止めて、どうやって育てていくのか。小学生のころからお魚街道まっしぐらで、子どもにも大人気の東京海洋大学准教授のさかなクンに、子どもの好奇心の育て方を聞いた。(取材・文=フリーライター神田憲行)

 * * *
さかなクン:私がお魚に興味をもったのは小学2年生のときでした。友達が描いたタコの絵を見て、「こんな不思議な生き物がいるんだなあ」とものすっギョく興味を持ちました。そこからタコを夢中で調べたり、お魚屋さんや水族館でタコを見て夢中になりました。また、休みがあると房総半島に住んでいた親戚の家に泊まらせてもらって海でタコを探しているうちに、海とお魚もどんどん好きになっていっていきました。

さかなクン:母に感謝しています。毎日のようにタコをお魚屋さんで買ってくれました。そしてタコの姿をじっくり見て絵を描きました。タコの料理を作ってとお願いすると、ぶつ切りとか、たこのバター焼きなど一ヶ月ぐらいずっと作ってくれました。フライパンにバターを入れて溶けてきたときに、塩・コショウをふりかけたタコのぶつ切りにしたのを入れて、フライパンで炒めるだけなんですが、それを我が家ではタコのバター焼きと呼んでいました。タコがだんだんピンク色になってきて、すごく美味しそうなんです。大好きなお魚だから、さまざまなお魚の魅力をギョ感で――いや五感ですね、すいません「ゴ」を「ギョ」という癖があるもので!もちろん、ギョはお魚の意味を込めています。

 ハコフグの帽子に白衣、いつもテレビで見る姿でインタビュールームに現れたさかなクンは、テンション高く魚との出会いを愛おしそうに語り始めた。私が「さかなクンさんが……」というと「さかなクンでお願いします!」。

さかなクン:お魚と並行して夢中になっていたのが絵を描くことです。母や祖父によりますと、何か夢中になるとその絵を描いて落ち着いていたそうです。お魚の前に描いていたのはトラックで、そのあと水木しげる先生の描かれる妖怪が大好きでした。水木先生が点だけで描写された妖怪の絵があって、「凄いな、点だけで絵になるんだ!」と驚いたのを覚えています。トラックも今もカッコイイと憧れを持っていて、自宅に三菱キャンター昭和55年モデルを持っています。

--どこのミニカーなんですか

 ミニカーじゃなくて、本物のトラックです。

--えっ本物ですか!?

さかなクン:はい。これは当時「黄金の脚」と呼ばれた2トンダンプトラックなのでギョざいます。今運転しているのはオートマチック車なので、漁師の友達のトッシー君に運転を教わっているんです。

 魚への探究心を持ち続け中学生になったさかなクンは、勘違いで入った吹奏楽部で、ある偉業を達成する。

さかなクン:吹奏楽部は「水槽がたくさんあるクラブ」と勘違いしちゃったんです。でも入ってみるといろんな楽器があって、ピッコロがヒュウヒュウと奏でるかと思えばチューバがボンボンと重低音を響かせたり楽しい。吹奏楽部の顧問の鈴木先生が、理科の先生でもありました。中学3年生のある日、鈴木先生から職員室に呼び出されました。「なにか怒られるのかな」とドキドキしていったら、理科室にカブトガニがいたんですよ!当時1年生の男の子のおじいさんが九州で漁をしていて、偶然網にかかったのを生きたまま、資料用に学校に送ってきたんですね。その飼育方法について、鈴木先生から相談されました。

 中学生で先生から飼育方法を相談されるのだから、さかなクンの知識の深さをうかがわせる。しかしカブトガニは元々身体が弱っていたのか数ヶ月で死亡。新たに2匹目が送られてきた。

さかなクン:そのカブちゃんは凄く元気で、持ち上げると脚と脚がぶつかってカチャカチャするくらい動き回るんです。水槽から理科室の床に出して散歩をよくさせていました。これがメスで、オスも送られて来ました。吹奏楽部の朝練習の前と放課後には2匹目を出して、よく散歩させていました。カチャカチャと音をさせながら歩き回っていました。

 理科室の床を這い回るカブトガニの図というのはなかなかシュールだが、ある夏の日、それが起きた。

さかなクン:オスがメスの後ろからしがみついていたんです。「あれ?交尾かな?」と思って見つめると離れる。目を離すとまたくっついている。そうするうちに水槽の水にトウモロコシの実みたいな黄色い粒が浮かんだんですね。誰かイタズラでおもちゃのボールでも入れたのかと思って掬ってみると、ブヨブヨしている。顕微鏡で確認したら、なんと卵でした。カブトガニが水槽の中で産卵することも、孵化することも珍しいことだそうです。たぶん水槽から出して散歩させていたのが、潮の満ち引きみたいなリズムになって、カブちゃんが勘違いしたのかな?と思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
フジテレビの取締役候補となった元フジ女性アナの坂野尚子(坂野尚子のXより)
《フジテレビ大株主の米ファンドが指名》取締役候補となった元フジ女性アナの“華麗なる経歴” 退社後MBA取得、国内外でネイルサロンを手がけるヤリ手経営者に
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(時事通信フォト)
《「心神喪失」の可能性》ファストフード中学生2人殺傷 容疑者は“野に放たれる”のか もし不起訴でも「医療観察精度の対象、入院したら18か月が標準」 弁護士が解説する“その後”
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン