先日、世界ラーメン協会の発表によると、世界の即席めんの総需要が初めて1000億食を突破した。「発祥国」日本を追い抜いて、国民一人当たり年間消費量トップは韓国。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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先日、世界24か国の即席ラーメンメーカーが参画する「世界ラーメン協会」から、袋めんやカップめんなど、即席めんの「世界総需要」の調査結果が発表された。2012年の全世界の消費量は初めて1000億食を突破する1014億2000万食となった。
その内訳が興味深い。まず各国の消費量だ。
1位 中国/香港 440億300万食
2位 インドネシア 141億食
3位 日本 54億1000万食
4位 ベトナム 50億6000万食
5位 インド 43億6000万食
6位 アメリカ 43億4000万食
7位 韓国 35億2000万食
8位 タイ 29億6000万食
9位 フィリピン 27億2000万食
10位 ブラジル 23億2000万食
上位10か国のランキングは、中国やインド、アメリカ、インドネシア、ブラジルなどの人口大国中心となっている。総消費量となると、人口大国が多くなるのは当然のことだ。もっとも各国での定着度となると、総消費量だけでははかれない。実際、各国の国民一人当たりの年間消費量となると少し傾向が変わってくる。まずベスト3は以下のとおり。
1位 韓国 72.4食
2位インドネシア 57.6食
3位 ベトナム 56.4食
続く第2グループに年間約40食で日本、マレーシア、台湾、タイが続く。さらに年間30食前後のグループに中国/香港、ネパール、フィリピンと、10位まですべてアジア勢が独占している。
1位の韓国では70食超えと全国民が週ニ1回以上、インスタント麺を食べている計算だ。実際、韓国において、インスタントラーメンの普及度は並ではない。日本のスーパー店頭でも見かける「辛ラーメン」のように、世界へ羽ばたいた商品もある。若者に人気の鍋料理「ブテチゲ」は、最後にインスタントラーメンで〆るのがお約束だ。
上位10傑のアジア勢の共通項は、各国独自の麺文化があることだ。2位のインドネシアの「ミー」、3位ベトナムの「フォー」などは日本のアジア系料理店でもよく見かける。タイの「センミー」「バーミー」「センレック」なども同様だ。もちろん日本人の「麺喰い」っぷりは、「うどん」「そば」を例に挙げるまでもない。
各国の麺文化はそれぞれ微妙に異なる。原料粉の種類にしても小麦、米、イモなどさまざまだ。汁の有無や「ゆでる」「炒める」「和える」など調理法や味つけにも無限のバリエーションが存在する。アジア各国が「国民ひとりあたりの消費量」で上位を独占したのは、アジアにおいて「麺文化」が身近だということの証左でもある。
「テンポの速い都市生活を送る人々の間で、人気を不動のものに。遠方への旅行のときにも携行食として真っ先に選びたくなる便利さ」(中国『チャイナネット』 5月1日付)
「インドネシアでは即席麺がおかずの一品として定着している感がある。わが家でもおかずが少ないときに食卓に並ぶことがよくある」(『NNA.ASIA』インドネシア版 5月2日付)
“日本発”のインスタント麺は、各国の麺文化に寄り添うようにして、存在感を増してきた。ちなみに国民ひとりあたりの年間消費量第11位のサウジアラビアのインスタント麺にはイスラム食の「ハラール」マークがついている。このほか、上位30傑にはロシアやナイジェリア、オーストラリアなどの名も。インスタント麺の地平はまだまだ拡大中だ。