多数の料理教室の生徒をかかえ、テレビや雑誌に引っ張りだこ。上品かつ軽妙な語りとともに和の家庭料理を伝える“登紀子ばぁば”こと、料理研究家の鈴木登紀子さん(89才)。そんな鈴木さんが“霜降り”について教えてくれた。
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みなさんは「霜降り」をご存じでしょうか。
サシ(脂肪)がたくさん入った大変お高い牛肉のこと…? たしかに、赤身の部分にサシが網の目のように入ったすき焼き用松阪牛などは、見事な「霜降り肉」ですわね。
しかし、今回私がお話ししたいのは、お料理の下ごしらえとしての「霜降り」。お肉や魚介類をさっと熱湯にくぐらせたり、または熱湯をかけたりしてから(湯引き、ともいいます)、氷水で急激に冷やす作業をいいます。加熱により表面が白っぽくなり、まるで霜が降りたように見えたのが、名前の由来です。とても美しい名前でしょう? このような感性にも、日本料理の粋を感じずにはいられません。
熱湯に通し、また急激に冷やすことで、お肉やお魚のもつクセをやわらげ、身をきゅっと引き締めてうまみを封じ込める目的もあります。
熱を加えすぎることがありませんから、たんぱく質が凝固せず、柔らかな食感や持ち味を損なう心配もありません。じつに理に適った下ごしらえなのです。
上手にできた霜降りは、加減酢(二杯酢や三杯酢にだしを加えたもの)、加減じょうゆ(しょうゆにだしを加えたもの)、梅肉じょうゆでさっぱりとどうぞ。初夏の酒肴にもよろしいですわね。
※女性セブン2013年5月9・16日号