中古品(リユース)市場の拡大が続いている。日本リユース業協会の統計に基づく推計によると、2011年度の市場規模(自動車、自転車、書籍、骨董品除く)は約4570億円で、10年度に比べて22%アップした。リユース市場は、中古車と中古住宅を含むと、約3兆円以上とも言われる巨大市場だ。中古品への抵抗感が薄れたことで、節約という守りのためのみならず、積極的に中古品を求める人が増えている。
「アベノミクス効果ですね」
そう語るのは、大手リユース・デパートのコメ兵の販売員。ゴールデンウイーク中、都内のコメ兵は多くの客で賑わっていた。高級時計や高級ブランドバックが人気だという。円安による価格上昇が始まりつつあるが、それ以上に、アベノミクスに伴う景気回復への期待感が、個人消費を押し上げているようだ。また、円安は、海外旅行客にとっては朗報だ。中古ブランド店は海外旅行客にも人気を博している。
景気が回復すれば、消費者は中古ではなく新品に向かうのでは、とも考えられがちだが、必ずしもそうではないようだ。船井総合研究所の福本晃上席コンサルタントはこう指摘する。
「新品を買う人が増えれば、それだけ、中古市場に出回る商品も増える。節約という観点から、リユース店は不景気のときに注目されがちですが、市場全体でいえば、好景気のほうが、好調なのです」
もちろん、景気回復だけが、中古市場拡大の要因ではない。福本氏によると、中古市場は2000年代に入ってから異業種の参入が始まり、2010年代に入ると、主に郊外に、大型店舗が登場する。市場拡大の背景には、東日本大震災以降の、消費者の価値観の変化も大きく影響しているようだ。
「東日本大震災を機に、使えるものを長く大事にしようというエシカル(倫理的)消費が広がりました。また、“断捨離”ブームが起きるなど、必要のないものは手放そうという意識が高まりました。そのため、売る人も増え、商品の質が高まってきたのです」
東京・表参道ヒルズのPASS THE BATON(パスザバトン)には、所狭しと、アンティーク雑貨やお洒落な服が並ぶ。ここは、スープ専門店「スープストックトーキョー」を展開するスマイルズが手掛ける、セレクト・リユースショップだ。バイヤーが欧米で仕入れたアンティーク品に加え、全体の3分の1を、個人が出品した商品が占める。個人出品の商品には、出品者の名前や顔写真が付けられている。よく訪れるという40代の女性こう語る。「モノを買っているだけでなく、知らない人とだけど、価値観や趣味を共有している気分になれるんです」
昨年、東京・原宿には、中古衣料チェーンのドンドンアップが旗艦店をオープンした。古着は安いだけではなく、個性やオリジナリティを表現するファッションとして、広く、若者の支持を集めるようにもなっている。
最後にもう一点、前出の福本氏は、ネットによって売買が簡便になった点を指摘する。
「ネットショッピングの拡大によって、現物を見ずに買うための“失敗”も増えました。ただ、それらを、気軽に売れるようにもなった。たとえばヤフーは今年の3月から、中古品の買い取り販売ビジネスを開始しました。現在、リユース売買の経験者は4割程度です。トレジャー・ファクトリーなど、リユース大手の実店舗に加え、ネットの参入によって、中古品市場はさらに広がると考えられます」
良いものを、たくさんの人で、長く使う時代が到来しつつある。