立夏を過ぎてもなお昼夜の寒暖の差が激しいこの時期。だが、「真夏の風物詩」であるビアガーデンは年々オープン時期が前倒しになり、早くも全国各地で賑わっている。
駅前に百貨店が多く、屋上ビアガーデンの激戦区となっている東京・池袋を例に、最新のビアガーデン事情を探ってみた。
4月26日に「屋上ビアテラス」をオープンさせた西武池袋本店。そして、西武に対抗するかのように翌27日に開業した東武百貨店池袋本店。まず両社に共通しているのは、ビアガーデンの客層を幅広く狙っていることだ。
飲食業界のニュースサイト『フードスタジアム』編集長の佐藤こうぞう氏が解説する。
「ビアガーデンは会社帰りに上司・部下で立ち寄るスタイルから、デートや女子会、ファミリー層まで呼び込みたいと考えています。西武が土休日や夏季に限って昼間も営業していたり、東武が飲み放題メニューにワインやカクテルを加えたりしているのは、様々なシーンで訪れる女性客を意識しているからです」
流行に敏感な女性客を満足させるには、酒類だけでなく料理を充実させることは絶対条件となる。
「昔のビアガーデンといえば、つまみはポテトフライとソーセージみたいな世界でしたが、今はそんなありきたりでは通用しません。池袋では、西武が鍋料理や鉄板牛肉料理、東武もプルコギ鍋を用意するなど、シェフがキャスティングした本格料理でリピーターを獲得しようとしています」(前出・佐藤氏)
料理の美味しさが口コミで広がれば、話題のスポットとして安定的に利益を得ることができる。「7月、8月の期間限定で一気に稼ぐだけではもったいない。少しでも長く営業して屋上の遊休地を有効活用したい」(流通コンサルタント)のが百貨店の本音のようだ。
さて、気になるビアガーデン予算はどのくらいを想定しているのか。キリン食生活文化研究所の『ビアガーデンに関する調査(2012年)』によれば、2008年から減少を続けていた平均予算は5年ぶりに上昇に転じ、3888円となっている。池袋の百貨店でメイン料理がついた飲み放題コース(2時間制)は、西武が3500円(大人)、東武が3600円(男性)となっているため、消費者のアンケート調査とほぼ一致する。
だが、今年はこんな“ツワモノ”まで出そうだという。
「アベノミクス効果も手伝って、ビアガーデンをはしごしていろんなシチュエーションを楽しむ、“ビアガーデン・ホッピング族”が出てくるかもしれません。そんなお客さんが喜ぶのは、コース料理というよりもエンターテインメント性でしょう。
バブル期には新橋で女性の『泥んこプロレス』を見ながらビールを飲むなんてビアガーデンがありました。それは極端な企画としても、音楽やその他イベントでサプライズのあるビアガーデンが増えれば、もっと盛り上がっていくと思います」(佐藤氏)
前述のアンケート調査で「行ってみたいビアガーデン」を聞いたところ、「お祭りや縁日の雰囲気で子供も遊べる」「打ち上げ花火が見える」といった回答も寄せられたという。開放的な気分に浸れるビアガーデン。今年は景気回復を追い風に、ますます注目されそうだ。