芸能

神田うの オンオフの差なくどんな状況でも自分の言葉で語る

 テレビ番組でカメラに映っているときとそうでないときに、タレントというのはオンとオフで切り替わる。ところが、なかにはその違いがない人もいたと、『王様のブランチ』の書籍コーナーでコメンテーターとして出演していた頃の思い出を、松田哲夫氏が振り返った。

 * * *
 ぼくは、1996年4月からTBS系テレビの情報バラエティ番組『王様のブランチ』にほぼ毎週出演していた。華やかなタレントたちに混じっての出演は、途中一年間のブランクを挟んで2009年9月まで続いた。

 とはいえ、初めのころはタレントたちとは、まったく交流がなかった。本のコーナーの15分だけ出て、あとは帰ってしまう、年齢的にもずっと年上のぼくは、彼らには別世界の人だと感じられたのだろう。ぼくの方も、どういう風につきあえばいいかわからない。だから、挨拶をかわす以上には親しくならなかった。

 ところが、そういうぼくに対して、なんのてらいもなくまっすぐに話しかけてきた人がいた。神田うのさんだ。それまでは、彼女についての印象は、「よくしゃべる人だなあ」という程度のものだったので、この気づかいには驚いた。おかげで、他のタレントたちとも自然に会話できるようになった。

 ところで、タレントの多くは、カメラに映っているときとVTRやCFが流れているときで、オンとオフを切り替える。VTRに出てくる胡散臭い人物に思いっ切り鋭い突っ込みを入れていても、スタジオにおりると、悪口などケロッと忘れたような顔をしている。「さすがプロ」だと思った。ところが、うのさんだけは違っていた。自分の言葉で、自分の言いたいことを、どんな状況でも言う。オンとオフの違いがないのだ。

 たとえば、「台風○号が近づいています」というニュースが流れたとき、「ワクワクしちゃう」と口走って、抗議電話が殺到した。もちろん、被害にあう人たちもいるので、公的には不謹慎な発言だ。でも、台風や大雪など非日常的な状況になるときには、誰しもがどこかでワクワクするではないか。

●松田哲夫(まつだ・てつお)/編集者(元筑摩書房専務取締役)。書評家。1947年東京生まれ。東京都立大学中退。1970年、筑摩書房に入社し、400冊以上の書籍を編集する。浅田彰『逃走論』、赤瀬川源平『老人力』などの話題作を編集。1996年からTBS系テレビ『王様のブランチ』・書籍コーナーのコメンテーターを12年半務めた。著書に『編集狂時代』『印刷に恋して』『「王様のブランチ」のブックガイド200』など。

※週刊ポスト2013年5月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン