米CIAの関与説も出ているボストン爆破テロ事件。兄のタメルラン・ツァナルエフ容疑者は死亡、弟のジョハル・ツァナルエフ容疑者も喉に傷を負い、筆談で供述しているという。
真相は依然として不明だが、事件の背景を解明するうえで一つの指針になるのは、「誰が得をしたか」を見極めることである。得をしたのは誰かといえば、その一人はオバマ大統領だ。
「シリアの内戦にオバマは軍事介入しようとしているが、アメリカの世論が許していない。アサド政権が化学兵器を使用しているという情報も流れているが、これも世論を動かすための米当局の仕掛けです。
同じく、イランへの軍事介入も政権側にとっては大きな課題となっている。アメリカ社会に反イスラムの空気が生まれることは、オバマ政権側にとって非常に都合がいいわけです」(元外務省国際情報局長の孫崎享氏)
もう一人、得をした人物がいる。ロシアのプーチン大統領だ。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が指摘する。
「今回のテロ事件は、チェチェン独立派を叩きつぶしたいプーチンにとってはプレゼントのようなものです。チェチェン系の人間が米国でテロを実行したことで、今後、欧米諸国はチェチェン独立派の幹部などの政治亡命に躊躇する方向に傾くことになるからです」
チェチェン過激派によるテロは残虐だが、ロシアによる圧政が背景にあるためこれまでは同情的に見られることも多かった。しかし、今後はアルカイダと同様のテロ組織として扱われるようになる可能性がある。
事実、オバマ大統領は兄弟の死亡・逮捕後の4月19日、プーチン大統領に電話をかけ、テロ対策で「緊密な協力」を得たことに感謝の意を示し、プーチンも賛同したという。この件に関しては、オバマとプーチンの姿勢が奇妙なほどに一致しているのだ。
この兄弟の両親は、いまも息子たちがテロの実行犯だったとは信じておらず、米諜報機関のでっちあげだと主張している。母親は、「タメルランはこの5年間、FBIに監視されていた。彼らは息子がどこで何をしているのかすべて知っていた。一挙手一投足を追っていたのだから」といい、FBIの監視下にありながらテロなどできるわけがないと訴える。
父親も「FBIは、タメルランとジョハルがちょうど悪い時間に悪い場所にいるよう仕組んだに違いない。やつらが息子たちに発砲し始めたとき、タメルランはジョハルを学校に送るところだった。これは仕組まれた、政治的な指令による、ハリウッドショーだ」と怒りをあらわにしている。
※週刊ポスト2013年5月24日号