犯罪白書によると、この50年、女性の刑法犯罪者は全体の20%前後で推移している。この数字が示すとおり、“犯罪は男性が犯すもの”というイメージは間違いではない。しかし、件数が少ないからこそ、我々の記憶には「女性による犯罪」が強烈に刷り込まれている。
ジャーナリスト・江川紹子さんと作家・北原みのりさんに、女による事件について振り返ってもらった。北原さんといえば、首都圏と鳥取で同時期に発生した連続不審死事件を取材し、『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』(朝日新聞出版)の著書もある。
北原:ふたつの事件を見ていて思うのは、変わったのは犯罪をする側の女ではなく被害者の男ではないかという気もするんです。私にはどちらの事件被害者も顔が一つに見えるんです。被害者に取材に行って感じるのは、彼らは決められない男たちだということ。長男ということも多くて、母親に甘やかされて、つまりスポイルされて育ったんだろうなあと。ケアされすぎて、女のカモになる男が量産されている。
江川:スポイルされているのは男だけではないんですよね、女も同じなんです。コミュニケーションする力の弱さが事件の背景にある場合があります。問題があっても、「助けて」と言えない、言わない。『大阪2幼児放置死事件』(2010年)も、そういう事件だったと思います。あれは本当にひどい事件。
北原:下村早苗のブログには長女が生まれたときの喜びが素直に綴られていて、“家族とはこういうもの”という理想を持っていたことがわかります。犯罪者の半生を調べると、その人自身が被害者だった歴史を持っていることがすごく多い。そういう人がすべて加害者になるわけではないんですが、ひとくくりに責められないものを感じるんです。彼女は懲役30年で刑が確定していますね。
江川:本当に悲惨な事件でしたから。彼女は一歩家を出たら、子供のことは考えず、まるで存在していないかのようにふるまっている。いわば思考停止型の犯罪。それにしても、なぜあそこまでの現実逃避ができたのか…。昔の方が、子殺しは多かったですが、まだ原因が見えやすかった。最近は、あえていうと、コミュニケーション不全と犯罪が結びついているような気がします。
※女性セブン2013年5月23日号