流通ジャーナリスト金子哲雄さん(享年41)が亡くなってから半年が過ぎた。肺カルチノイドという難病と闘いながら最後の日々を綴った遺作『僕の死に方――エンディングダイアリー500日』には、今も毎日感想をしたためた多数の葉書が寄せられている。
41才という若さにして、自らの葬儀のプロデュースまで行った金子さんの「生き方」が広げた感動の輪――その金子さんを支え続け、最期を看取った妻の稚子さんが、闘病の日々、そして今日までのことを語った。
金子さんは余命幾ばくもないと医師から宣告されても、歩みを止めず、死の直前まで仕事に励んだ人だ。
「病気が悪化するまでの金子は、『座らない人』でした。いつでも歩いていた。スーパーの棚、流行りの店やスポット…いつでも現場を走り回っていました。走りながら休む、という感じです。だから、私が足を止めていると心配になるんでしょうね(笑い)」(稚子さん・以下「」内同)
足を止めたくないから、過去も振り返らない。
「金子のことを取り上げていただいたテレビの番組をありがたいと思いながらも、まだ見られません。ちょっとキツいですね。過去に思いを馳せる気持ちにはまだなれない。前に進むことで精いっぱい。これも、金子と同じだなと思うんです」
稚子さんは今、金子さんが用意したまた別のミッション−−生前、お世話になった関係者との食事会に奔走している。それは稚子さんにとって、足を一歩前に進める行為だ。
「忙しさが続いているんですが、動き続けることで精神の安定を保っている感じです。『これって金子だ』ってひとりでツッコんでいます」
※女性セブン2013年5月23日号