感動的なエピソードとして、ネットを中心に広まった『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)の「23年間会話のなかった夫婦」。妻が子供中心の生活になったことを寂しく思った夫が、拗ねてしまい話したくても話せなくなり、23年が経過したという話だが、この夫婦に希望を見いだす人たちもいる。
政府の「教育再生実行会議委員」を務め、安倍晋三・首相のブレーンとして知られる八木秀次・高崎経済大学教授は、「この夫婦こそ日本の家族再生のモデルになり得る」というのだ。
「この夫婦の価値観は、戦後のような短いスパンではなく、日本の歴史のなかで培われてきた夫婦像を体現しているんです。古事記にも、イザナギとイザナミの夫婦で、イザナミが火の神を生んで火傷したことに怒ったイザナギが、子供の火の神を殺してしまう描写がある。子供のことで拗ねる父親は、古代日本から続く伝統なんです。しかも、その後イザナギとイザナミの仲は回復できませんでしたが、この夫婦はみごとに再生した。
家族の価値が見直されているいまだからこそ、多くの人がこの夫婦に伝統的家族の再生を見いだし、感動したのではないか」
番組に涙した人たちは、たとえこの夫婦がレアケースだとしても、そのかすかな可能性に希望を見いだしたかったのかもしれない。
※週刊ポスト2013年5月24日号