<認知症に「地中海式ダイエット」が効果>──4月29日、米国神経学会の学会誌『ニューロロジー』に掲載されたレポートが話題になっている。
これは、アメリカに暮らす1万7478人の男女(平均年齢64才)を対象に、食習慣の調査を行い、分析したもの。その結果、“地中海式ダイエット”を食習慣に取り入れている人たちは、そうではない人たちに比べ、「思考や記憶に関する問題が生じる可能性」、つまり認知症の症状を発症するリスクが2割程度低いことがわかったのだ。
魚と貝のオリーブオイル香草焼き、ムール貝のトマトパスタ、チーズをつまみながらの赤ワイン…ちょっと洒落たイタリアンレストランのメニューのようなこれが、「地中海式ダイエット」メニュー。
ギリシャや南イタリアなど、地中海沿岸地域の“伝統的な食・生活習慣”のことを「地中海式ダイエット」という。糖尿病や高脂血症治療が専門の「オリーヴァ内科クリニック」院長・横山淳一さんが解説してくれた。
「第二次世界大戦後、1950年代のアメリカでは、動脈硬化による心疾患が死因のトップで、特に働き盛りの40~50代が急死することが社会問題になっていました。そこでミネソタ大学のアンセル・キーズ博士は、欧米諸国の食生活と心疾患の関係性について調査。すると、地中海沿岸諸国では心疾患による死亡率が低いことがわかり、“地中海式ダイエット”として注目されるようになったのです」
ちなみに、ここでいう“ダイエット”は、食事制限ではなくギリシャ語diatiaを語源とする「正しい生活、食事方法」の意味。研究の中心だったアメリカでは、当時からファストフード中心の食生活が問題視されていた。彼らがヘルシーな地中海料理を食べることで、“ダイエット効果”もあったことはいうまでもない。
「地中海式ダイエットを続けると、体脂肪を減らすことができて、病気も未然に防げる。これは食事による健康法なんです」(前出・横山さん)
では、地中海式ダイエットはどういう理由で認知症リスク軽減の効果を発揮するのだろうか。神経内科が専門で、脳の働きに詳しい医学博士の米山公啓さんは、こう解説する。
「これまでのさまざまな研究から、アルツハイマー型認知症になりやすい危険因子として、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満など生活習慣病とのかかわりが指摘されています。最近では、食事や運動が認知症の症状を緩和させたり、予防につながることもわかってきました」
つまり、生活習慣病の予防や老化防止につながる“地中海式ダイエット”を続けることで、認知症のリスクを減らせる可能性が高いというわけだ。
※女性セブン2013年5月23日号