世界最大の投資ファンド運用会社、米ブラックストーングループの最高経営責任者(CEO)であるステファン・シュワルツマン氏が私財などを投げ打って、総額3億ドル(1ドル=100円で約300億円)もの中国での大学院留学奨学金制度を立ち上げる。奨学金の規模としては世界最大。
しかも留学する大学は中国の名門、清華大学で、中国の最高指導者である習近平・国家主席の母校でもあることから、「奨学金制度創設はチャイナビジネス絡み」と話題を呼んでいる。
同グループの総資産は177億4100万ドル(2010年)だが、運用資産は1191億1500万ドル(同)と桁外れの投資運用を行なっている。今年第1四半期の純利益は前年同期比28%増の6億2830万ドルと好調だ。
CEOのシュワルツマン氏は66歳で、1985年、リーマンブラザーズを辞めて同グループを創立したニューヨーク・ウォールストリートの風雲児で、2007年の収入は3億9000万ドルで、昨年は6億5000万ドルと伝えられている。
今回の総額3億ドルの奨学金制度創設では同氏の出資額は1億ドルで、残りの2億ドルは企業などに出資を募る。
いまのところ、出資企業に名乗りを上げているのは軍需、航空機産業のボーイング社や建機のキャタピラー社、金融のJPモーガンチェース、バンクオブアメリカ、クレディスイスなど世界の一流企業ばかり。
さらに、顧問委員会にはヘンリー・キッシンジャー氏やコンドリーサ・ライス氏といった元米国務長官のほか、コーリン・パウエル元米統合参謀本部議長、ロバート・ルービン氏やヘンリー・ポールソン氏といった元米財務長官の名前も。
さらに同奨学金の最高責任者にはトニー・ブレア元英首相やニコラス・サルコジ元仏大統領、ケビン・ラッド元オーストラリア首相、ブライアン・マルローニー元カナダ首相の名前が取り沙汰されている。奨学金制度の運用が開始されるのは3年後の2016年までには、正式に決まることになる。
奨学生の人数も桁外れの年間200人で、当初の計画では50年間で1万人の奨学生を募集する。しかも、修士課程や博士課程を修了するまで援助を続けるという太っ腹な計画だ。
この奨学金制度には中国側も全面的に協力する予定で、すでに習近平主席ファミリーと親しいブルームバーグ・ニューヨーク市長が水面下で習主席側近や中国政府幹部と接触し、細部の計画を詰めていると米ニューヨークタイムズは報じている。いずれにしても、これだけ錚錚たるメンバーが計画に関わっていることから、単なる学術的な交流を目的とした奨学金制度ではなくて、ビジネスの要素が極めて強いようだ。