中国社会科学院の研究によると、海外に逃亡した中国高官の数は1990年代以降、1万6000~1万8000人にのぼるとされる。その実態について拓殖大学海外事情研究所付属華僑研究センター長の澁谷司氏が解説する。
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なぜこれほど多くの高官が海外へ逃亡するのか。
理由はいくつかあるが、今のところは汚職の摘発を恐れて高飛びするケースが目立つ。政権が代わったり、自分の上司が失脚したり、別の派閥から上司が来たりすると、いきなり汚職の疑いをかけられてしまうことが日常茶飯事の国である。財産を築いても中国国内にいる限り、いつ奪われてもおかしくないため、海外に逃げる。
汚職の疑惑を突然かけられるのは、ランクの高い官僚であっても例外ではない。中国人の権力闘争の人物相関図は日本人には理解できないほど複雑であり、例えば現在の習近平体制は「反腐敗」の姿勢を打ち出しているが、誰が狙われているのかはまったくわからない。
当面安泰と言えるのは、せいぜい習近平国家主席を筆頭に激しい権力闘争に勝ち残ったチャイナ・セブン(中央政治局常務委員会常務委員の7人)、その直下の政治局員、これら最高幹部計25人程度までである。それ以外の官僚は、いつ誰が海外に逃げてもおかしくない。
逃亡先として人気なのは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどだ。共通するのは移民の受け入れが盛んな国という点で、比較的、移住のハードルが低い。多額の資金を持つ中国高官のような移民は受け入れられやすい。
※SAPIO2013年6月号