5月11日にすい臓がんで亡くなった夏八木勲さん(享年73)。昨年11月にがんが見つかった時、すでにステージはかなり進行していたという。
学生時代はスポーツに打ち込み、慶應大中退後、俳優座養成所へ入所。酒好きでモテる男ではあったが、他の役者仲間のように女遊びをするようなタイプではなかった。そんな彼が結婚したのは29才の時。日英ハーフのまり子さんとの間に2人の娘をもうけるも、仕事優先の毎日。そんな自分を夏八木さんはかつてこう語っていた。
「最悪のパパであり夫でしょう。一緒に遊ぶこともしないしサービスもゼロ。あくまでも自分中心」
さらに世話が焼けるし、うるさいのだという。
「でも大らかなまり子さんは全然気にしていませんでした。夫婦円満の秘けつを聞かれれば“夫が家にいないから”なんてチャーミングに話すし。彼は家では仕事の話を全然しないし、台本を読む姿も恥ずかしいといって見せなかったそうですから、彼女は作品になって初めて夫が何の仕事をしていたか知ることになるんです。だから彼の作品を見るのは、彼女の楽しみのひとつになっていたと思いますよ」(夫妻を知る人)
まり子さんは仕事第一の夫の生き方を尊重した。子供が大きくなっていっても、「(ローンの)支払いのために、やりたくない仕事を入れるのはやりきれない」という夫の考えに従い、長く借家暮らしをしていた。そんな夏八木さんにがんが見つかったのは、ドラマ『ゴーイング マイ ホーム』(フジテレビ系)の撮影中だった。
「まり子さんが直接本人に伝えたそうです。手術で生き永らえる可能性もあったんですが、それではドラマを降板しなければならず、その後の仕事復帰の見通しも立ちません。夏八木さんの思いは手術を拒否して仕事をするということだけでした」(テレビ局関係者)
「手術を受けて」と泣いて頼めば、もしかしたらすぐに仕事をやめて治療に専念してくれるかもしれない。だけどそれでは、これまで夫が歩んできた道を否定してしまうことになるのではないのか…。夏八木さんのいちばん近くにいたからこそ、まり子さんは夫の決意に同意したのだろう。
※女性セブン2013年5月30日号