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米軍に風俗の活用を進言する橋下徹市長がもしも女性だったら

 従軍慰安婦問題、駐留米軍に風俗活用など橋下徹・大阪市長の発言が大きな問題になっている。避難が集中する一方、擁護する政治家もいる。大人力コラムニスト石原壮一郎氏が「大人の恥」を考える。

 * * *
 どうかしちゃったのか、もともとそういう人だったのか、日本維新の会共同代表&大阪市長の橋下徹氏の暴走が止まりません。5月13日の記者団とのやり取りの中で、旧日本軍の従軍慰安婦制度について「必要なのは誰だってわかる」と発言。また、1日に沖縄を視察した際には、沖縄で米兵の性犯罪が多発していることにからめて、米軍の男性司令官に「若い兵士の(性的)欲求にどのように対応しているのか。合法的な風俗での対応は考えていないのか」と質問し、相手を凍り付かせました。

 もちろん大きな波紋を呼んで、あちこちから激しい非難を浴びたり多くの人を激しく呆れさせたりする一方で、石原慎太郎共同代表が「そんなに間違ったことは言っていない」と述べるなど、一部には擁護の声もあります。騒ぎになったあとも、橋下市長はさらにヒートアップ。ツイッター上で、従軍慰安婦は必要だったし米軍は風俗業を利用すべきだという持論をムキになって延々と述べています。

 こういう性にまつわる問題は、自分が男性か女性かによって無自覚の刷り込みに影響されて偏った見方をしてしまいがち。大人として客観的な視点を持つために、大奥を舞台にしたあのマンガじゃありませんが、「もしも軍隊という組織が女性中心で、橋下市長も女性だったら」という架空の世界を想定して、もう一度発言を見直してみましょう。

 たとえばその世界には、橋下ならぬ股下という何かと話題を呼ぶ女性政治家がいて、「女性兵士の性欲を解消するために、(軍隊に帯同した男性が性欲のはけ口になる)従軍慰安“夫”の制度は必要だった」と胸を張って発言したとします。さらに米軍の司令官に「アメリカの女性兵士が沖縄で性犯罪を起こさないように、(日本人の男性が働いている)風俗業をどんどん利用したらどうか」と提言。その上で「本音を言って何が悪い」「従軍慰安夫がいいことだとはひと言も言っていない(でも風俗の利用は推奨)」と開き直る……。

 うーん、自分がその男女逆転の世界に生きている男性だとしたら、きっとものすごく不愉快ですね。「なに都合のいい屁理屈こねてるんだ、男性をバカにするのもいいかげんにしろ!」という気持ちになりそうです。ということは、つまり現実の世の中の女性のみなさんも、ものすごく不愉快な思いをなさっているってことですね。

 なんだかんだ言って男性中心の世の中に生きている男性の立場で考えると、男性にとって都合のいい理屈を「本音」とか「世の中の真実」といった体裁のいい言葉で飾って、強引に正当化してしまいがち。「女性の立場になって考えてみる」のは当然としても、さらに一歩進んで「男女の立場を逆転して考えてみる」のが、うっかり恥ずかしい見解を持ってしまわないための大人の想像力であり大人の謙虚さです。暴走中の橋下市長や唯我独尊な石原慎太郎共同代表は、そんな殊勝な試みをする気はまったくないでしょうけど。

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