悠仁親王殿下は「帝王学」を、いつ、どのようにして学ばれるのか。そしてその中身はどのようなものなのか。皇室ジャーナリストの久能靖氏は「すでに悠仁様の帝王教育は始まっている」と指摘する。
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昭和天皇は学習院初等科を卒業されると、旧高松宮邸(東京・高輪)に開設された東宮御学問所に移り住み、5人のご学友と7年間、特別講義を受けられた。講義は倫理、歴史、理化学、フランス語、国語・漢文、武課など15科目。講師には東大や学習院の教授など、当時その分野で一流の学者が総動員されている。
今上陛下の場合は、東宮御学問所のような特別な施設はなかったが、学習院の授業を受けつつ、やはり専門の学者から個人講義を受けておられる。悠仁様も中学校に入られるころから、学校の授業とは別に、同じような形で講義をお受けになると思う。
そこで何を学ばれるかは、秋篠宮様や悠仁様のお考えにもよるが、おそらく日本史、東洋史、西洋史を勉強されるだろう。天皇陛下は各国の元首や大使とお会いになる機会が多い。その際、相手国の歴史や文化をお調べになるが、決して付け焼き刃的なものでない、深い知識や教養をあらかじめ身につけておく必要があるのだ。陛下がどの国へ行かれても相手国と日本の交流の歴史にふれられるのもそうした蓄積があるからだ。
もちろん歴代天皇についても徹底的に勉強される。かつて今上天皇はサッカーワールドカップ日韓共催についての「おことば」のなかで、「私自身としては、桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると、続日本紀に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています」といった発言をされたが、歴史に精通していないと、あのようなおことばは出てこない。
明治天皇の御製(和歌)もよく引用されている。悠仁様もいずれ、宇多天皇が醍醐天皇への譲位に際して、天皇の心得を記して与えた『寛平御遺誡(かんぴょうのごゆかい)』や宮中の有職故実を順徳天皇自身が解説した『禁秘抄(きんぴしょう)』などの書物もしっかりと学ばれることになろう。
歌会始や月次(つきなみ)祭などでは和歌を詠まれるが、和歌をはじめ毛筆のため書道も欠かせない。天皇の「おことば」はすべてご自身で考えられるだけに作文力を身につけるための国語も必須だ。英語の授業も必ず受けられるが、もう一か国語、勉強なさるだろう。それらの勉強には膨大な時間が必要だ。今上陛下の場合は、学校の授業の時間を10とすれば、個人的に受けられる講義の時間は12ぐらいだったとお聞きしている。
加えて重要なのは、学問だけでなく実際に秋篠宮様とともにお務めをなさることで実地で学ばれることだ。これから悠仁様をいろいろなところに連れて行かれるだろう。悠仁様も子供心にも周囲の雰囲気などで多くを感じるはずだ。そうして一歩一歩成長されていくに違いない。
※SAPIO2013年6月号