東京を始め各地で真夏日を記録する日が増え、海へ、山へとレジャーに最適な季節になった。この時期になると、ドラッグストアなどでは水着姿の女性モデルのポップとともに日焼け止めが並ぶ。「化学工業統計」(経済産業省)によれば、化粧品全体の販売数量が伸び悩むなか、2006年以来、「日やけ止め及び日やけ用化粧品」の販売数量は右肩上がりで増え続けており、なかでも男性用の市場は昨年から爆発的な伸びを見せているのだという。
実際に、2012年2月に「ギャッツビー ストロングUVカットスプレー」(マンダム)が発売されると、需要が高まる4~9月期に男性向け日焼け止め商品でもっとも多く売れた。株式会社マンダム商品PR室の新木織恵さんによれば、男性のニーズが高まっているのに適合商品がほとんどなく、従来の女性向け製品では男性の肌に合わない現状をみて、男性化粧品メーカーとして専用の日焼け止めを提供することに決めたのだという。
「今年は他社からも男性用UV商品が相次いで投入されてきましたので、昨年ほど顕著な実績は見せていませんが、男性用サンスクリーン市場自体は対昨年190%超と拡大しているため、7、8月の本格的な使用シーズンに向けて実績上昇を見込んでおります」(新木さん)
男性向けのUVケア市場規模は、2010年の2億5000万円から2011年は2億8000万円へと微増で推移していたが、2012年には4億円と1.4倍へ激増、今年は6億円まで伸びると見込まれている(富士経済調べ)。
この拡大市場の上げ潮へ乗り遅れまいと、ロート製薬は「オキシー クーリングドライUV」でスプレーとローション、ジェルの3タイプを、大塚製薬が「ウル・オス」に2種類の日焼け止めを投入。ニベア花王も2011年から展開している「ニベアフォーメン UVプロテクター」を約2倍を目標として拡販している。
市場が活況を呈するほど、本当に男性は日焼けを気にするようになったのだろうか。銀座ケイスキンクリニックの慶田朋子院長は「意欲は高まっていますよ」と言う。
「皮脂の分泌量が多く汗をかきやすい男性にとって、日焼け止めはベタベタすると敬遠されてきました。でも、日焼けは将来のシミやシワの元になるということが世の中に浸透した。女性は無意識に肌がキレイな方がよい遺伝子だと判断してしまうという報告もありますから、男性にとって女性からどう見えるかも影響が大きいのではないでしょうか」
とはいっても、男性の誰もが毎日こまめに美容に気をつかっているわけではない。男性の日焼け止めニーズの多くは、女性のように毎日の生活で使用するよりも、アウトドアのレジャーやスポーツのときなど限定的な使用が顕著だ。
「弊社の製品は高校生から30代まで幅広い層の方に使っていただいています。部活動や海などのレジャー、ゴルフなどのアウトドアスポーツの際の使用が浸透しています。また、女性はチューブから少しずつ出して体につけるプロセスも含めて重要視しますが、男性はその手間が面倒という人が多いです。スプレー式で簡単に塗布することができ、清涼成分を配合したクールな使用感が受け入れられているようです」(前出のマンダム商品PR室の新木織恵さん)
男性も使用するのが当たり前になりつつある日焼け止めだが、不慣れならではの失敗も少なくない。
「男性は女性よりも髪が短いですから、髪が長い女性と同じ日焼け止めの塗り方ではいけません。顔だけ塗って、耳の部分を塗り忘れている男性が多いんですよ。耳だけ日焼けして、そこにシミができるなど悩まれる方も少なくありません。髪で覆われていない部分は全部、日焼け止めを塗ってください」(前出・慶田朋子院長)