中国には50を超える少数民族が居住する。中国共産党政府の凄まじい民族弾圧に屈することなく、抗議行動はますます激しくなっている。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、中国共産党の少数民族弾圧についてリポートする。
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「チベット仏教の僧侶たちは、ダライ・ラマ法王を中傷し、“悪魔”と呼ばなければ罰せられます。僧院には毛沢東、鄧小平、江沢民らの肖像が飾られて、毛沢東思想の教育が強制されています。集会やデモをすれば投獄され、多くが殺害されます」
昨年4月、チベット亡命政府のロブサン・センゲ首相を招いて、私が理事長を務める国家基本問題研究所でシンポジウムを開きました。これは、センゲ首相がその際に語ったチベットの状況です。
中国共産党によるチベット人やウイグル人、内モンゴル人をはじめとした少数民族への弾圧は、ますます強まっています。彼らは自らの宗教や文化、生活習慣を禁じられ、チベット人、ウイグル人、内モンゴル人らしく生きようとすると罰せられます。そして共産党の残虐きわまりない手段によって、事実上の民族浄化の危機に晒されています。
チベットでは、共産党政府の圧政に抗議するための焼身自殺が後を絶たず、その数は100人を超えました。昨年11月に来日したダライ・ラマ法王は、私とのインタビューで、多くの僧が相次いで焼身自殺するのは「大いなる悲しみと大いなる憤り、耐え難さのため」だと語りました。生身の体を焼き尽くして死ぬという最も苦しい死に方で、チベットの若き僧たちは中国共産党による恐るべき圧政の事実を世界に知らせようとしているのです。
こうした人々に、中国共産党政府の公安組織は想像を超える弾圧を続けています。例えば焼身自殺を図った人たちの火を消した後で、息がある場合には公衆の面前で死ぬまで殴る蹴るの暴行を加えると言います。
焼身自殺は国家分裂を企む罪であるからという理由です。焼身自殺者の周辺にも公安組織の手は伸びています。今年2月には、焼身自殺者の知人らチベット人70人以上を“自殺を唆した罪”で逮捕しました。自殺の様子を携帯電話で撮影したチベット人には懲役2年、一部には“唆した罪”で死刑判決まで出ています。
※SAPIO2013年6月号