芸能

本好きタレント優香 芸能界入るまではほとんど読んでなかった

「王様のブランチ」に書籍コーナーのコメンテーターとして出演していたとき、司会をつとめていたタレントの優香は「優香が泣くと10万部」と言われるほど、読書家だった。彼女と本との関わりについて、松田氏が振り返った。

 * * *
 朝日新聞の「be Extra BOOKS」で、その年の話題の本を紹介する役割を2004年から2010年まで続けた。本好きの女優、タレントとの対話というスタイルで、杏さん、眞鍋かをりさん、加藤あいさんなどがお相手をつとめてくれた。2005年は優香さんだった。

 日頃は、ゆっくり話をすることができないので、この機会にと思って、「子どもの時から本が好きだったの?」と尋ねてみた。すると、「この世界(芸能界)に入るまでは、本ってほとんど読んでなかった」という意外なこたえ。「どういうきっかけで読むようになったの?」と聞くと、「トーク番組に出ていると、しっかり自分の言葉でしゃべっている人がいるんです。そういう人たちは、どうやら本を読んでいるらしいと気がついたんです」

 タレント周辺にいるスタイリストやメイクの人には、かなりの読書家がいるので、彼らにすすめられる本を読んでいたという。そして、「王様のブランチ」に出るようになると、ぼくのコーナーがあった。そこで取り上げた本のうち興味が持てそうなものがあれば、読むことにしたという。

 こんな身近に、ぼくのコーナーを活用してくれている人がいたとは。ぼくの感激もひとしおだった。そして、意欲的に読んでいけば、短時間に、これだけ立派なコメントを語れるようになることがわかった。

 ぼくが「王様のブランチ」で取り上げた本の中で、一番の反響があったのは重松清さんの『その日のまえに』。

 常々、「泣いた(涙)」と「ベスト1」という言葉は視聴者に届きやすいと感じていたので、この本を「涙!涙!!涙!!! 今年読んだ最も感動的な小説だ。ぼくはベスト1に決めました!」と紹介した。ぼくとしては、切り札を切りまくったつもりだったが、それに「優香さんの涙」というとびきりの切り札も加わったのだ。

「松田さんが泣いたという話を聞いて、『すごいいいよー』って言われて。でも、そう言われると、期待しちゃうし、構えちゃうんですが、号泣しました。本当に素直に、こんなに泣くんだって、自分にびっくりするくらいでした」

 この日、放送直後から爆発的に売れ、三時間ぐらいで、放送したエリアの書店の店頭から本が消えてしまったという。これ以後も、優香さんがコメントした本はよく売れるようになり、評論家の大森望さんが「優香が泣くと十万部」と論評するまでになった。

●松田哲夫(まつだ・てつお)/編集者(元筑摩書房専務取締役)。書評家。1947年東京生まれ。東京都立大学中退。1970年、筑摩書房に入社し、400冊以上の書籍を編集する。浅田彰『逃走論』、赤瀬川源平『老人力』などの話題作を編集。1996年からTBS系テレビ『王様のブランチ』・書籍コーナーのコメンテーターを12年半務めた。著書に『編集狂時代』『印刷に恋して』『「王様のブランチ」のブックガイド200』など。

※週刊ポスト2013年5月31日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン