中国の北京や上海の大学では今年卒業する学生の就職内定率が4月末現在、3割に達していないことが分かった。中国では2003年から就職難が続いており、超氷河期といわれてきたが、今年は中国全体の大卒者は699万人と過去最高なだけに、就職できない卒業生も最多となるとみられる。今年に入って、中国経済は低迷しており、若者の不満が爆発し、社会不安が助長されるとの観測も出ている。
中国教育省は今年の大卒者数は前年比19万人増の699万人であり、「今年はこれまでに比べて最も就職が難しくなりそうだ」との予測を発表。
北京の卒業生は22万9000人で、4月下旬の段階で、卒業生全体の就職内定率は28.24%とこれまでで最も低い記録となった。主な内訳は、大学院生が36.59%、学部生が26.6%、専科生(専門学校に相当)は16.84%。
中国青年報によると、上海の場合は内訳は不明だが、29%と、やはり3割に達していない。
これについて、北京市教育委員会は「中国を取り巻く国際経済の状態が依然として悪化しているのに加えて、中国の今年の国内総生産(GDP)成長率(経済成長率)の目標が7.5%に据え置かれているため、就業ポストと卒業生の需給状態が極めてアンバランスになっている」と指摘する。つまり、卒業生が多い割には、求人数が少ないという現象が今年は著しいということだ。
さらに、中国では5月は卒業試験の真っ最中ということもあって、卒業が正式に決まっていない学生が多いため、正式な内定が出ていないという事情も就職内定率の低さの原因となっている。
中国では昨年11月25日、国家公務員試験が行なわれたが、こうした超氷河期を反映し、受験者は110万人と、2004年の11万人に比べ10倍に急増。前年比でも15%増と、過去最高を記録した。一方、採用者数は2万人と倍率は55倍の超難関となった。
公務員と並び人気が高いのが国有企業だが、総計で約1200社とやはり狭き門で、「成績だけでなく、党幹部などの有力者のコネがなければ、採用は無理」(北京の国有企業関係者)といわれ、やはり難関だ。
このため、北京紙「新京報」などによると、就職浪人は今年の卒業生の15%を占める100万人にも達するとみられる。これに、昨年以前の就職浪人が少なくとも600~700万人以上いるとみられるだけに、これだけの若者が定職を持たず、アルバイトなどで食いつないでいる計算になる。
北京の共産党筋は「中国は今年成長率を7.5%と低めに設定するなど経済の低迷が予想される。これらの大卒のフリーターに加え、都市部に出て、都市住民と差別化され、貧困に喘いでいる農民工(出稼ぎ労働者)が2億人もおり、不満を爆発させて暴動が起こる可能性も否定できない。習近平政権にとって、就職問題は喫緊の課題であることは間違いない」と指摘している。