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年金65才受給を60才に繰り上げると76才8か月以上生きると損

 ついに今年4月から、会社員が加入する厚生年金の支給が60才から61才に引き上げられた。その後も3年ごとに1才ずつ引き上げられ、最終的に12年後の2025年度には、年金は65才からの支給になる。

 すでに国民年金は65才からの支給なので、現在51才以下の人は、65才にならないと年金を受け取ることができなくなってしまう(女性は2018年4月から60才→61才への引き上げが始まる。65才への引き上げが完了するのは2030年度)。

 これまで、サラリーマンの定年は60才。定年後は年金で悠々自適な生活を送る…というのがスタンダードだったが、もはやその時代は過ぎ去った。これからは65才まで働くことが当たり前になる。

 広島県在住の石川紀子さん(59才、仮名)は、昼間は正社員として事務の仕事をしながら、夜は午後6時から9時頃まで整骨院のアルバイトをかけもちして、合計の収入が月約15万円。7年前から夫と別居し、アパートを借りて一人暮らしをしている。収入の大半は家賃や光熱費、食費に消え、貯金ができる余裕はない。石川さんは女性のため60才から厚生年金はもらえるが、「恐らく月1万5000円程度」(石川さん)という。

「今の貯金は200万円ほど。65才になって国民年金ももらえれば、合わせて月8万円ですからかなり楽になります。とはいえ、昼も夜も働き続けるのは体力的にもう限界。来年からは昼の仕事だけにして、国民年金の支給を5年繰り上げて、60才からもらおうかと思っています」(石川さん)

 石川さんの言う“年金の繰り上げ”とは、本来年金がもらえるようになる年齢よりも前倒しして、年金を受け取る制度。特定社会保険労務士の斎藤敬徳さんが説明する。

「年金事務所に申請すると、1か月単位で年金をもらい始める時期を早めることができます。本来65才からの年金受給でも、最大で5年早めて60才から受け取ることが可能になります」

 石川さんの場合は国民年金だが、実は今年60才(段階的引き上げで年金受給は61才から)を迎えて「年金の空白期間」が生じた人たちの間でも、厚生年金をもらい始める時期を前倒しする「繰り上げ受給」をする人が増えているのだという。

 しかし繰り上げ受給には、時期を1か月早めるごとにもらえる年金額が0.5%下がるという“ペナルティー”がある。仮に60才から受け取るとすると5年=60か月分、30%も下がってしまうというデメリットが。

「本来、65才から支給される年金を60才からもらい始めた場合、76才8か月以上生きると損をします。平均寿命を考えると、特別な事情がない限り、繰り上げはしないほうがいいと思います」(斎藤さん)

 5年前倒しでもらった人と、1年前倒しでもらった人でもらえる年金の総額を比べると、5年前倒しの人は20年間で1000万円以上、年金額が少なくなる計算。一度繰り上げてしまうとやり直しはきかないので、要注意。どうしても前倒ししたい場合は、年金額が6%減で抑えられる1年以内の繰り上げにとどめておきたい。

※女性セブン2013年6月6日号

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