今、繁華街には不動産関係者が目立つようになってきている。好景気の中、都心の地価がすでに上昇しているからだ。ある不動産業者は、「あまり、ヨソ様にはいえないですが……」と前置きしつつ、顔をほころばせる。
「年明けから地上げに着手して、かなり稼げています。地上げというと“乱暴な立ち退き活動”を想像され、ここ数年は銀行に敬遠されてまったく融資を受けられなかったけど、事情はガラッと変わった。今は金融機関のほうが“ここがチャンス”と見て我先にと貸してくれる。それでもさすがにメガバンクは、“コンプラが厳しいんで”といって、関連のノンバンクを紹介してきますけどね(笑い)。
地上げの仕事は次から次へとくる。ちょうど今は神田と白金台の土地を手がけてますが、持ち主も強気になってるので金額は必然的に上がります。土地を転がして一日で数千万円儲けられるあのバブル期の再来も、すぐそこでしょう」
バブルといえばゴルフ場開発がその象徴だが、近年は客足が遠のき、昨年は全国で44ものコースが倒産した。ところが、ここでも笑みを浮かべる業者がいる。ゴルフ場の土地を扱うブローカーがいう。
「倒産したゴルフ場の転売価格は10年以上前には平均8億円でしたが、あれよあれよと下落して1億円以下で転売されていた。私たちはそれをさらに買い叩いて、新経営者に新たな事業の提案とセットで売る。客が戻ってきているので、ゴルフ場として再利用するのも手ですが、最近は複合リゾートやメガソーラー基地に転換させるケースも多いですね。転売価格は入手額の2、3倍。横流しするだけなので、濡れ手で粟です」
郊外でもそんな調子だから、都心で余った土地はすぐにマンションやビルなどの開発対象になる。地上げをして建物を潰し、更地にする必要のないコインパーキングがいま急激に数を減らし、開発が進んでいる。
その結果起きていることは、都心での駐車スペースの減少だ。意外な指摘をするのは、駐車違反を取り締まる監視員である。
「統計はまだないですが、ここ数か月、都心で路上駐車が増えて駐車禁止の違反切符を切るケースが増えている実感があります。もちろん反則金は警察の収入になる」
“風が吹けば桶屋が儲かる”とはこのことだろう。
※週刊ポスト2013年6月7日号