70才以上の入院でもっとも多いのが脳梗塞などの脳血管疾患、次いでがん、骨折が続く(厚生労働省平成23年度「患者調査」より)。自分の親が、ある日突然倒れたら−−いざという時に備え、準備すべきこととは? 実母ががんになった人のケースから考えていく。
75才になる実母が、2年前すい臓がんのステージⅣと診断されたという原口さん(主婦・40才)。
「即入院、手術で一命を取りとめましたが、先月再発…。医師からは『もうできる治療はない』と冷たく言い放たれ、母はひどく落ち込んでしまいました。今はいろいろな民間療法を試しながら、緩和ケア病棟の空きを待つ日々。最初の手術と入院50日で約60万円。再発以降は保険適用外の抗がん剤など自由診療に毎月十数万円…。がんってこんなにお金がかかるんだなぁと改めて実感しています」(原口さん)
こんなケースに医療コーディネーターの岩本ゆりさんのアドバイスは…。
「治療方針の不安や不満については、病院の相談窓口や医療コーディネーターに相談を。セカンドオピニオン先や、主治医の提示した治療以外の選択肢も紹介してくれます」
専門家の相談窓口を活用して納得いく治療が必要だと岩本さんは言う。
「私たち医療コーディネーターに連絡をくださるかたの7割ががん患者。原口さんのケース同様、主治医に『これ以上治療法がない』と言われてもあきらめきれず、セカンドオピニオン先や別の病院の紹介を求めていらっしゃいます。
病院や担当医師が信頼できない場合や、納得のいく治療を受けたいときは、ひとりで悩まず、相談窓口に連絡してみてください。がん治療もステージが進むにつれ、保険適用外の抗がん剤や最先端の治療など自由診療を迫られるケースも。
また、保険適用外の高額な民間療法は、効果が実証されておらず、『ビジネスであって、メディシン(医療)ではない』と否定的な医師もいます。主治医から反対されて悩むかたもいますが、デメリットも理解した上で、本人の心の平穏が得られるならその治療も選択肢のひとつであると思います」
実は医療費には上限があり、超えると戻ってくると介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが話す。
「入院や通院でがん治療をすると、1割負担でも数十万円の出費に。ただし、同一の医療機関に支払う医療費には、暦月(月の初めから終わりまで)毎に上限があり、それを超えると公的医療保険から支払われる仕組み。これが高額療養費制度。ただし、公的医療保険に支給申請書を提出するなど、手続きが必要。さらに、70才以上の場合は、入院と外来で手続きが違うので病院窓口で確認を」
では高額医療費の上限額はいくらになるのか?
1か月の医療費が上限額を超えた場合、公的医療保険に領収書などを送付し、後日支給を受ける。年齢や収入によって支給額は変わるが、年金暮らしの場合、外来で月8000円以上支払った分は戻ってくる。
外来時の自己負担上限額(70才以上)は次の通りだ。
・月28万円以上の所得者:4万4400円
・一般:1万2000円
・低所得者(年金収入のみ):8000円
※女性セブン2013年6月6日号