2年前に導入されて以来、飛ばないと言われていた統一球。確実に本塁打が減っていたのだが、今年は一変、本塁打数が1000本超えペースで増えている。そこで本誌は、プロ野球を各種データから分析した『プロ野球なんでもランキング』(イースト・プレス)の著者・広尾晃氏の協力を仰ぎ、冷静にデータ面から検証してみることとした。
その結果、意外な結論が出た。データ上は「ボールが変わったとはいえない」のだ。順に見ていこう。まずは本塁打である。
「本塁打という記録は、一握りの選手がたくさん打つという非常にバランスの悪いもので、単純な本塁打総本数はあまり信用できるデータではないんです」(広尾氏)
そこで使用するのがHR/PA(本塁打÷打席数)という指標だ。これは1打席あたりに出る本塁打率で、この数字を見ると統一球導入後初年はセ・リーグ平均が0.010、パ・リーグ平均が0.009、2年目はそれぞれ0.010、0.009と本塁打率が低下、今年になって0.012、0.010とやや上昇していることがわかる。
特に跳ね上がっているのは、本塁打数上位10傑の数字で、セ・リーグトップ10が0.053、パ・リーグトップ10が0.046で統一球導入前の水準(各々0.060、0.047)に近くなっている。しかし、注目すべきは「それ以外」の打者の数字。ほとんど変動がない。
「ここから、本塁打を狙える打者が一発を量産し、その数字だけが目についているということがいえます。実際、飛ばないはずの統一球でも、2011年に中村剛也(西武)が48本も打ったように、限られた打者は統一球を苦にしない。
今年を見てもバレンティン(ヤクルト)やブランコ(横浜)に加え、新加入のルナ(中日)やラヘア(ソフトバンク)、ジョーンズ(楽天)、アブレイユ(日本ハム)など、外国人の長距離砲ばかり打っていることがわかります」(広尾氏)
また、飛ぶボールなら本塁打だけでなく、外野への飛球も増えるはず。それを示したのが、1試合当たりの外野フライ数の指標「PО/G」(外野手の刺殺数÷試合数)で検証した。しかしここにも、統一球になって減少した数字が、今年になって劇的に増大したという形跡はない。
※週刊ポスト2013年6月7日号