子女を海外留学させ、資産も海外に移転させて、身ひとつでいつでも海外に逃げ出せるようにしている中国の高級官僚たちを「裸官」と呼ぶ。その数は60万人とも100万人ともいわれる。
「裸官」たちは子女だけでなく愛人も海外に住まわせ、いざという時の逃亡先候補にしているようだ。“妾村”と呼ばれる高級住宅街がロスにあった。
ロサンゼルスのダウンタウンから車で30分。人口4万9000人の約3割を中国系が占める街、ローランド・ハイツがある。
ここ10年あまり、中国の富裕層が投資目的を兼ねて先を争うように高台の高級住宅地を買い漁った。商業地には中国語の看板が立ち並び、行き交う人はアジア系が多い。ごくわずかなコリアンとベトナム人を除けばほとんどは中国系だ。
この街の住宅地の一角が数年来、「Ernai Village」と呼ばれている。“Ernai”とは中国で愛人の意。つまり「妾村」だ。中国の高級官僚などが愛人に“別荘管理”をさせていると台湾系アメリカ人が話題にし、現地の華字メディアなどでも報じられた。どんな場所なのか。
地元の不動産業者によると平均的な家屋は寝室4部屋、バスルーム3つ、プール付き、3800平方フィート(約353平方メートル)で、ざっと90万ドル(約8900万円)。中国人富裕層にとっては現金払いできる額だという。
「物件が気に入ると、ドル紙幣をびっしりつめたトランクを持ち出してきて、ぱっと開け、これで払うと言い出す。彼らにとっては住宅ローンもクレジットもあったもんじゃない」(地元の中国系不動産業者)
商業地を抜けて高台に向かって車を走らせると、高級住宅が立ち並ぶ。周りを高い塀で囲う家屋が目立つ一帯が「妾村」と呼ばれるエリアで、「中国高官らの愛人が数十人は暮らしている」(ロス在住の台湾系中国人)とされる。昼間に外出する者の姿はあまり見られず、塀の向こう側の暮らしぶりは外からはわからない。
地元の中華料理店で働く中年の台湾系女性はこう言う。
「時々、愛人だとすぐわかる若い女性を連れてくる中年男性がいますよ。ポルシェでやってきてチップもはずんでくれるし、ありがたい客よ。なんでも彼女にアメリカ人の家庭教師をつけて英語を習わせているんだって。愛人を囲うなら中国よりもアメリカのほうがいいんじゃないの。遠すぎて奥さんにばれないしね」
※SAPIO2013年6月号