銀座といえば、いまも昔も「憧れの夜の社交場」だ。とりわけ銀座7、8丁目界隈は名だたるクラブや老舗バーが軒を連ねる。ところが、一歩裏通りに入ると、銀座に不釣り合いな“空間”が至る所に目につく。ビルの谷間にポッカリと口を開けたようなコインパーキングだ。日本一の地価を誇る銀座に駐車場とはどういうわけなのか。
「地価上昇を見越して土地を取得しても、下手にビルを建てると転売しづらくなり、かといって更地のままでは収益を生まない。暫定的に駐車場にしておくわけです」(みずほ証券チーフ不動産アナリスト・石澤卓志氏)
銀座の地価は、ピークの1992年から2012年までの20年で4割下がった。銀座の街を虫食い状態にしている駐車場は、まさに「失われた20年」の“爪痕”といえるのだ。
とはいえ、光明も見えてきた。ここにきてようやく地価に反転の兆しが出てきたからだ。円安で動きやすくなった外資系金融機関や中国人富裕層など、国内外のマネーが銀座の土地争奪戦に参戦してくれば、おのずと駐車場の数も減ってくるはずだ。
一方、駐車場同様、銀座らしからぬ光景がもうひとつある。夜のクラブ街を連れ立って歩くジャンパー姿の2人の男だ。実はこの2人、元警察官で、昨年4月からボランティアとして銀座の「夜のパトロール」を担っているのだ。
パトロールが始まったきっかけは、中国人女性の客引きによる悪質なぼったくり事件の急増だった。酔っ払いを狙って路上で声を掛け、あらかじめ口裏を合わせている店に連れ込み法外な料金を請求するという。
それだけならまだしも、酒に睡眠薬を入れたり、北朝鮮から流れていると噂される自白強要剤を使うケースもある。いわれるがまま、何軒も店をはしごして一晩で100万円を超える被害に遭った例もあるのだ。それにしても、いつからこんな銀座になってしまったのか。
「5年ほど前に石原前都知事が新宿・歌舞伎町の浄化をしてからです。韓国人は六本木に、中国人は銀座に流れ、銀座は『歌舞伎町化』したんです」(老舗クラブの経営者)
20人とも30人ともいわれるぼったくり中国人女性だが、その数が減ったという話は聞かれない。景気回復でコインパーキングは姿を消しそうだが、こちらはそうもいかないようだ。
※週刊ポスト2013年6月7日号