生命保険といえば、「自分が死んだ後に遺された家族が困らないように」という思いのもと、加入者が死亡した後に遺族が保険金を受け取るのがこれまでの常識だった。
しかし、保険金ではなく、葬儀などのサービスを受け取る「現物給付型保険」の導入が現実味を帯びるに従って、保険に対するそうした概念が大きく変わるかもしれない。
「誰にも遺産を残す必要はないが、自分の後始末は自分でしたい」という究極の加入者が、“おひとりさま”だ。ここに生保業界は新しい可能性を見ている。
「今まで独身者は最も顧客に遠い立場でしたが、男性にも女性にも生涯結婚しないという方が増えている中で、独身者に合った保険の形というものも考えていく必要がある。
独身者の最大の心配は“自分が動けなくなった時、死んだ時に誰かを困らせたくない”ということ。現物給付型であれば遠い親戚や友人に迷惑をかけることなく、介護生活を送り、自分の葬儀を済ませることができます」(大手生保商品開発担当者)
これまで「遺された家族のため」のものだった生命保険が、「最期を迎える自分のため」に変わる時、日本の家族の在り方にも、さらに大きな変化が待ち受けているのかもしれない。
※週刊ポスト2013年6月7日号