中国は近くて遠い国だが、国民の官僚への思いには共通点も多いようだ。取材で香港に滞在中のジャーナリスト・富坂聰氏が現地からレポートする。
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「釣魚台は歴史的にも法律的にもわが国固有の領土であり、領海を警備するのはわが国の当然の権利である」
尖閣諸島に中国の巡視船が近づいたことを受けて日本が領海侵犯に対する抗議を行った際、必ず繰り返されるのが中国外交部(外務省)スポークスマンのこんな発言である。
国内的にも強気の態度が崩せないため、一様に語気は強く、表情も硬い。国を背負って戦っているといった雰囲気に努めるため、日本人が見ればあまり気持ちの良いものではない。
だが、いくら強面を気取ってみても国内での評判はいまいちのようだ。その裏には「どうせお気楽な公務員だろ?」といった国民感情があるからだとされる。
実はいま、中国のネットでは官僚のお気楽な仕事を揶揄した風刺メールが出回って話題になっている。省庁別にいろいろなバージョンがあるのだが、それぞれ「〇〇省のお仕事」というようなタイトルを付け、その一週間の具体的な仕事の中身を紹介しながらおちょくるという内容だ。
では、そのメールのなかで外交部の仕事はどう描かれているか。
<月曜日 外国との間に問題が勃発。出勤してきた官僚は会見でこう述べる。「関注事態発展(事の推移を注意しながら見守っている)」
火曜日 一つ段階を上げてこう発言。「厳重関注(厳しく見守っている)」
水曜日 進展も改善も見られない状況に対し、いよいよボルテージを上げてこう発言する。「抗議!」
木曜日 さらにもう一つレベルを上げて発言。「厳重抗議!」
金曜日 もはや厳重抗議でも足りない。言葉の強さもマックスとなる。「表示憤慨(もう怒ったぞ)!」
最高に高まった緊張感の中、土曜日の仕事は……。休み! 日曜日も、休み!>
メールを受け取った人々の間では、見事に核心をついていると評判は上々だ。