「われわれはどこから来たのか」というテーマで本を書くため、今年の初めに諏訪中央病院名誉院長で『がんばらない』著者の鎌田實氏はアフリカを訪問した。訪れた先で感じたアフリカと日本との関係について、鎌田氏が報告する。
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今年1月、南アフリカを皮切りに北上し、3週間の取材を行なった。今回、ケニアより再び3週間かけてアフリカ大陸を北へと縦断してきた。
旅したのは、いわゆる「大地溝帯」を中心に東海岸沿いの国々。ここから人類の祖先の骨がいっぱい出ている。
アフリカは実に元気だ。現在、約10億人がこの地で暮らしているが、2025年には地球上の全人口の17%がアフリカの人々で占められるという。
資本主義は壁にぶつかると、常にフロンティアを求めてきた。かつてはアジアやアメリカ大陸が資本主義のピンチを救った。現在のニューフロンティアはアフリカだ。2010年のアフリカ全体の経済成長率は約5%。2011年は3.4%だった。
オリンピックなどの世界的な規模のイベントを行なう前には経済成長するが、終わった後は借金を抱えて不況になるという現実を、過去数多くみてきた。
アテネやバルセロナのオリンピック後のギリシャやスペインがまさにそうだ。
南アは、サッカーのワールドカップを終えた。僕は南アの経済成長にも暗雲がさすのではないかと心配していたのだが、南アは苦境を乗り越えたようだ。
2012年8月、大規模なストライキが行なわれ、国債の格付けも下げられたりしたが、11年のGDPは3.3%。12年は5.9%と着実な伸びをみせている。南アの財務省は、今後数年の経済成長を3~4.1%と見積もっている。
外国からの投資もさかんだ。日本の車や電気製品も出回っている。しかし「日本製がいいというのは分かっているけれど、高い」という。最初は「日本製がほしい」と思っていても、安いからと中国や韓国の製品を買う。買って使ってみたら、「まあこれでもいいか」となって、徐々に中国製や韓国製の製品が増えてきたらしい。
これはアフリカ全体に見られる傾向だ。人口10億人に達するアフリカのフロンティアに対して、日本の企業はなかなか踏みこむ勇気を持てないようだ。
●鎌田實(かまた・みのる)/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。ベストセラー『がんばらない』、新刊『がまんしなくていい』(集英社)ほか著書多数。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。
※週刊ポスト2013年6月7日号