アベノミクスの効果で株価が急上昇。安倍政権発足時は、8000円台だった日経平均株価は一時1万5000円台に突入した。とはいうものの、まだ給料のアップまでにはつながっていない。あるのは“期待感”だけ。すでに数字にも表れている。
一般社団法人日本リサーチ総合研究所は、消費者の景気や雇用、収入、物価などに対する見通しの変化を反映した『生活不安度指数』を1977年から隔月で公表している。消費者の不安度はバブル期後半の1990年頃は100前後だったが、バブル崩壊のデフレ不況で2008年12月には165まで悪化した。
その不安度が、今年に入って大幅に低下し、この4月には131まで改善している。また、不安度は女性より男性、専業主婦よりサラリーマンのほうが、大きく低下しているという。 調査研究部主任研究員の松村憲仁さんはこう解説する。
「消費者の生活不安度は、実に12年前の水準まで短期間で改善しました。これは、たとえば実際に収入が上がっているということではなく、この先、上がるだろう、景気がよくなるだろうと見込んでいる人たちが増えたということです」
現在、株価は1万4000円台で推移している(5月27日現在)。半年前は8000円程度だったのが嘘のような数字だ。
「この半年で株式市場はガラッと変わりました。本当にそうです」
そう話すのは立花証券顧問の平野憲一さんだ。そして、まだまだ株価は上がりそうだと『期待』する人が増えると株価は上がり、さらに『期待』する人が増えるとさらに上がり──。
「今は、久しぶりの希望です。私はアベノミクスへの期待感を、『ワクワクするような不透明感』と表現するようにしています」(平野さん)
株価の上昇は、企業業績を押し上げる。企業の業績が伸びて収益が上がれば、宣伝費が増え、営業マンなどの交際費も増えていく。企業が宣伝費を使えば、それを受け取る広告代理店やマスメディアの業績も上がる。そうなれば交際費も増えていく。会社の経費で飲み食いできるとなれば、1軒が2軒になり、電車で帰っていたのがタクシーになる。
その膨れ上がったお金の行きついた先が、バブルの時の六本木の喧噪だった。“社用族”と呼ばれたサラリーマンは、タクシーチケットを束で持ち、接待相手との高額な会食も経費で落とした。それは、使った分だけ、もっと稼げばいいし、稼ぐことは簡単にできる――そうした確信があったからだろう。
※女性セブン2013年6月13日号