ライフ

本屋大賞『海賊』隠れた演出 『永遠の0』特攻隊員登場に「感動」の声

 今年の本屋大賞を受賞し、100万部を超えるベストセラーを記録している『海賊とよばれた男』(講談社)。作家・百田尚樹さんが、出光興産の創業者、出光佐三をモデルとし、企業の再生と戦後復興の闘いを描いたドキュメント小説だ。

 この作品に、百田さんの代表作『永遠の0』の宮部久蔵少尉が登場するシーンがあることが話題を集めている。宮部少尉は、終戦間際、ゼロ戦に乗り込み、特攻の一員として26才で亡くなった登場人物だ。

『海賊とよばれた男』の上巻の後半部分にこんな場面がある。主人公の国岡鐵造が中国・上海の日本軍の航空基地を視察した際、ゼロ戦から若い航空兵が降りてくるところに遭遇。

<若い航空兵は立ち止まり、海軍式の敬礼をした。鐵造は青年の無駄のない美しい動きに感服した。二十歳をわずかに過ぎたくらいの背の高い痩せた男だったが、全身から精悍な空気が漲っていた。胸の名札に「宮部」と書いてあるのが見えた>

 上・下巻で宮部少尉が登場するのはこの場面のみだが、ネット上では気づいた人の間で話題になっており、「感動して泣いちゃった」「憎すぎる演出」「ゼロのあの宮部さんだと思っただけで泣けてしまう」といった声が出ている。

 文藝評論家の末國善巳さんはこう指摘する。

「ほかの作品の登場人物を登場させる手法は、海外ではスティーヴン・キング、国内では京極夏彦さんなどがよく用いています。わかる人にはわかるぐらい程度に登場させることが多い。百田さんも、“遊び”“ファンサービス”として盛り込んだのではないでしょうか。

 また、鐵造と宮部という年齢も経験も違う2人が交錯する場面があることで、戦時中に地獄を見た日本人が、戦後、祖国を復興するためにどれほど懸命に闘ったのかがよくわかります。このシーンにより、日本の戦後復興の姿が立体的に見えてくるんです。この時代に生きた人たちが、同じ思い抱いて必死に生きていたということを示す強烈なメッセージにもなっています」

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン