大メディアを通じて入ってくる情報だけでは、彼の国の実態を理解するのに十分ではない。中国に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏がレポートする。
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中国もいよいよ銃社会の幕開けか? そんなことを連想させる事件が、5月20日に発生し一部で話題を呼んだ。
発砲事件が起きたのは、河南省の省都・鄭州。発生したのは午後9時50分ごろ。場所は市内のど真ん中で、人も車も決して少なくなかったという。
北京の夕刊紙の記者が事件の概要をこう説明する。
「被害者は、41歳の不動産会社社長です。被害者といっても実際はかなり威勢の良い人物なのですが、彼が鄭州市内の大きな交差点で車を止めていると、いきなり後ろから追突されたというのです。これがきっかけです。この王という名の社長は当然のこと怒り、運転席から外に飛び出すと相手のワゴン車に近づいていったのです。
彼は、相手を車から引きずり出してやろうと怒鳴り声を上げながら近づいたというのですが、相手はその社長を何の前触れもなく撃ったというのです。発射された銃弾は、王社長の腰部に命中しました。ワゴン車を運転していた人物や同乗者の行方はいまだに不明です」
王社長はこの事件の顛末をネット上に公開して手がかりを求めた。すると、全国から「いきなり発砲された」といった類似の書き込みがけっこう入ったという。だが、肝心の王社長の被害については冷たい反応が多く、「ザマミロ!」といった書き込みがあふれた。その理由は、王氏が追突されたときに乗っていたのが高級車ランドローバーだったからだという。
金持ちはネットのなかでは相変わらず人気がないようだ。