昭和の時代の娯楽といえばテレビドラマ。一家に1台だったテレビの前に集まり、家族揃って泣いたり笑ったり…。翌日の学校の話題も「ねぇ昨日の○○見た?」からはじまった。
いつの時代も私たちの生活に彩りを与えてくれるテレビドラマについて、『働きマン』などの脚本家・吉田智子さんと、『サマーレスキュー』などの脚本家・秦建日子(はたたけひこ)さん、毎クールすべての作品をチェックしているというテレビウオッチャー・カトリーヌあやこさんの3人に、語ってもらった。
カトリーヌ:自ら書かれた脚本のなかで、特に印象に残ってる作品って何ですか?
吉田:私は『美女か野獣』(2003年)です。福山雅治と松嶋菜々子のW主演でプレッシャーがすごかった。“撮って出し”の報道の世界を描きながら、脚本も突貫になって(笑い)。あれから働く女性を応援する作品を多く描くようになりました。
秦:ぼくが印象的なのは木村拓哉主演の『HERO』(2001年)。今でもよく覚えているんですけど、12月30日の夜にプロデューサーのかたから電話で、「今から会いたい」と。話を聞くと、キムタク主演の検事ドラマの5話の脚本がないため、1月7日までに決定稿が欲しいと言われ、そのまま1月の3日まで徹夜で書いて、連日打ち合わせをして、7日までの記憶がおぼろげになるぐらいの過酷さでした。
ぼくは脱サラしてこの世界に入ったんですけど、会社をやめるとき、みんな「脚本家なんて…バカだな」という雰囲気で、周りからスッと人がいなくなって。でも、『HERO』がオンエアされた途端に「見たよー」とバンバン電話がかかってきて知り合いが大量に戻ってきた(笑い)。もしかして自分は今、壁をひとつ乗り越えた? 職業・脚本家って名乗ってもいい?という気持ちになったキッカケのドラマです。
カトリーヌ:『HERO』のキメゼリフ、マスターの「あるよ」もいいですよね。
※女性セブン2013年6月13日号