晩婚化の進行により、「高齢出産」への不安が増大している。こうした時代の空気は、女性の妊娠時期を管理しようとする政府の動きまで引き起こした。しかし、妊娠や出産に関する誤解を解き、正しい知識を身につければ、むやみに不安を抱く必要などないのだ。話題書『卵子老化の真実』(文春新書)の著者で、日本で唯一の出産専門ジャーナリストの河合蘭氏によれば、高齢出産は平成だけの話ではないという。
1980年代以降、高齢出産が増加傾向にあるのは事実だが、その以前は今よりもはるかに高齢出産が多かったと河合氏はいう。
「大正14年には、45歳以上の母親から生まれた子供は2万人近くいました。これは現在の21倍になります」
さらには50代の母親から生まれた子供も、大正14年には3648人にのぼっていた。
「高齢出産が多かったのは“産み止め”ができなかったというのが大きな理由です。その後、高度成長期に出産年齢が若返り、次に晩婚・晩産時代に移行するのは先進国に共通した現象。“妊婦は若いもの”というのは高度成長期の特殊な感覚なのです。今は再び昔に戻りつつあるといえますね」(河合氏)
もちろん、初産の高齢出産は現代の方が圧倒的に多いのは間違いないが、高齢出産数が今より21倍多かった時代を思えば、そう神経質になることではないのかもしれない。
※週刊ポスト2013年6月14日号