中学時代からいじめにあい、初のエッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を出版するまで苦節の日々だったという林真理子さん(59才)。そんな林さんが、世の中に溢れる“不満”や“不幸”について語った。“ ”内が林さんの発言だ。
“今、同世代の人たちと話すと、夫や子供への不満ばかりです。「こんなはずじゃなかった。人生を間違った」って。でも、その人生は自分で選んだものだし、では、人生を変えるために何かしているかというと何もしていない。
そこにとどまっている不幸というのが、人生のなかで、いちばんの不幸なんですよ。心の中は不平不満、人への妬み嫉みでいっぱいで。
そして、もう手遅れだと思っているんですね。でも、人生に遅いということはない。40代や50代、あるいは60才以上の人にも野心を持って努力してもらいたい。だって50代になっても平均寿命までまだ30年もあるんですよ。不満を持ったまま生きている中高年の人って、だんだんそういう顔つきになってきますよね。
私は『新規まき直し』と言っているのですが、現状がいやなら、自分がまず変わる。具体的なアクションを起こしてみましょうよ。”
まず自分を変える。それは、林さん自身の体験そのものでもある。コピーライターとして評価を得つつあった林さんは、知り合いの編集者から執筆依頼を受けた。それなのに、怠けたまま日が過ぎていく。これではいけない。なんとかしなければ。林さんの野心に初めて火がつく。
〈恋愛やセックスのあけすけなエピソードやちょっと下品なことまで、とにかく誰も書いていないような女性の本音を書けば絶対に売れるはず。あの時は、悪魔に魂を売り渡してもいいとさえ思っていました〉
この決意が『ルンルンを買っておうちに帰ろう』のエッセイに結実したのだ。
“私が今、不平不満を持て余している人に提案するのは2つのことです。
【1】自分の稼ぎを持つ
裕福な家庭の専業主婦でも、夫からつねに『おまえを養ってやっている』と言われ、カードの明細書を突きつけられて、『何でこんなバッグが必要なんだ』とか言われて、もう何も買う気がしないなどと言っている人がいる。
パートでもいい、自分で稼いで、そのお金で自分の好きなものを自由に手に入れることから、始めたらどうですか。
そして、その仕事の場で少しでいいから野心を持つ。偉くなろうでもいいし、お客さんに認めてもらおうでもいい。私が知るある佃煮屋で、どんなときでも誰にでも笑顔で対応する店員さんがいます。お店でもなくてはならない存在だと思うし、自分でも絶対に充実した毎日だと思うんです。
気が利いて有能な人って、パートでも引き立てられていくと思うんですよ。私には年下の友人がたくさんいるんですが、私に限らず、仕事をしていれば、年代の違う友人を持つことができるし、お酒を飲んだりごはんを食べておしゃべりする楽しい時間が持てる。自分のお金で楽しむ分には、夫にも気がねはいりませんよね。
もちろん、家族と一緒で楽しいということが人生のベースですけれども、年を取るにつれて、子供は離れていくし、夫との会話も減っていく。そんなとき異世代の友達とのおしゃべりは貴重です。
【2】きれいになろうとする
私は何度もダイエットをしては失敗しています(笑い)。でも、これって、すごく必要なことだと思います。ダイエットであれなんであれ、それで成功すれば、達成感も得られますよね。この達成感の経験がとても大切。それによって、さらに伸びよう、あるいは、別のことに挑戦しようという意欲が湧いてくる。
そのもっとも身近な挑戦が“きれいになりたい”。だから洋服、美容、化粧品にお金を使ってほしい。高価なクリームを買っただけでも気持ちが違うと思うんですよ。カラーリングも自分でしてもいいけど、美容院でやってもらう。それだけで気分も美しさも違う。そのためにも自分の稼ぎが必要ですけどね。
あんなにきれいだった同級生が、何でこんな汚いおばちゃんになっちゃったんだろう、と思うことがよくありますが、その逆で、きれいになったわね、と思わせる、言わせる野心がほしいですね。”
※女性セブン2013年6月13日号