胡錦濤・前国家主席の長男、胡海峰氏が浙江省嘉興市の共産党委員会副書記に就任していたことが嘉興市の党委機関紙「嘉興日報」の報道で明らかにされた。胡海峰氏といえば、国有企業の幹部として、親の七光りを利用して荒稼ぎしたうえに、不正な取引をしたと報じられたことで、ビジネスの世界には戻れなかったようで、やむをえず政界に転身したようだ。
父親が共産党の最高幹部で、ビジネス界から政界入りした人物としては、李鵬元首相の長男、李小鵬氏・山西省長が有名だが、李氏と胡海峰氏の両氏に共通するのは「親の威光をひけらかす苦労を知らないボンボンで、庶民から嫌われている点だ」と北京のジャーナリストは苦笑いする。
海峰氏は上海交通大学を卒業後、父の胡錦濤氏の出身校でもある名門、清華大の大学院でビジネスを学び、同大が出資する国有企業の幹部に就任。親の七光りで、空港で使う検査機器を中国内の空港や海外で売り込んだが、2009年、アフリカのナミビア政府との取引で不正行為があったと欧米メディアに報じられ、同大の副秘書長に転身しビジネス界から引退したとみられていた。
だが、翌年には嘉興市にある同大の浙江清華長江デルタ研究院のトップに就任したことで、嘉興市と縁ができ、同市党委副書記に選出されたという。
海峰氏は自身の悪行でビジネス界にいられず、都合良く政界入りした形だが、中国では最近、幹部階級の息子や孫が権力や財産を独占する「権貴階級」という特権階級化していることに批判が高まっている。
とくに、最近、かつての最高実力者のトウ小平氏の孫のトウ卓棣氏が広西チュアン族自治区の苹果県副県長に就任したり、国家主席を務めた葉剣英氏の孫、葉仲豪氏も広東省で党幹部を務めているほか、今年3月まで全国人民代表大会(全人代)委員長だった呉邦国・元党政治局常務委員の息子も上海市幹部に選出されていたと報じられている。
ネット上では「権貴階級が党や政府の幹部を私物化している」との書き込みが目立つなど、市民の不満が高まっている。
今回の胡海峰氏のケースはその典型例だけに、香港メディアを中心に、胡氏の過去の悪行を含めて、政界転身を揶揄する内容が目立っている。