いまや大企業といえども、いかに会社外の人間をいかにうまく活用できるかが肝心だが、日本企業の多くが活用からは程遠いところで躓いていると大前研一氏はいう。いま日本企業が取り残されている状況について、大前氏が解説する。
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いま世界の最先端企業では「非正社員」「外部の能力ある人材」をいかにうまく活用できるかが競争力を左右すると考えられている。そのための“武器”が、最もコストが安くてクオリティの高い知的ワーカーを世界中から集め、ネット上で契約社員として専門的な仕事をさせる「クラウド・ソーシング」だ。
たとえば、アメリカ・シリコンバレーの「オーデスク(oDesk)や「イーランス(Elance)」など、クラウド・ソーシングのサービス仲介会社が急成長している。
これらの会社は世界中のフリーランス・ワーカーと電子市場(マーケット・プレイス)でつながっている。ウェブサイトやモバイルアプリの開発、ライティング、翻訳、グラフィックやウェブのデザイン、セールス&マーケティング、カスタマーサービスからR&Dの請け負いまで、多様な分野に登録しているフリーランス・ワーカーと、彼らに仕事を発注したい個人や企業を結び付けている。
私自身、オーデスクで見つけた海外の翻訳家に仕事を依頼したことがあるが、日本の会社の見積もりが納期1か月・料金450万円だったのに対し、その翻訳家は納期1週間・料金7万5000円で、クオリティも満足できるレベルだった。
一方、多くの日本企業は、クラウドの「ク」の字もできていないのが現状である。かつての日本のメーカーはブルーカラーが8割、ホワイトカラーが2割という構成だったが、いまは比率が逆転してホワイトカラーが8割になっている。ブルーカラーの仕事は簡単に海外に持っていけるが、ホワイトカラーの仕事は、前号で述べたように、よほど整理しないと海外に持っていけないからである。
その結果、日本では“ブルーカラー的な定型業務”をホワイトカラーがやっている。たとえば、売掛債権の回収およびその消し込み業務、商品の在庫管理、コールセンターなどである。
本来、ホワイトカラーは事業企画や商品企画など、高い給与に見合うだけのクリエイティブな非定型業務で付加価値を生んでいかなければならない。アメリカ企業はアウトソーシングできるものは、まず外に出して正社員を減らす。そうすると景色がよく見えるようになって頭を使った仕事に集中できるようになる。
ところが、日本企業はブルーカラー的な定型業務も事業戦略のような非定型業務も抱え込んでいるから効率が悪く、コストもなかなか低減できない。これでは、アップルやグーグルのような創造性のある新商品やプラットフォームを生み出せるわけもない。
※週刊ポスト2013年6月14日号