世界最大の人口を抱える中国から、中国人が次々と脱出している。一時期は日本の不動産の買い占めも話題となったが、中国で、移民先として人気が急上昇しているのは地中海やインド洋に浮かぶ自然豊かな島だという。
中国人に人気がある移民先は米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどだが、ほかにアジアで人気なのはシンガポールだ。住み慣れたアジアのなかでは、日本と並んで最も環境対策が進んだ国である。2011年には中国人が不動産を買い漁る現象が起き、高級住宅の約3割が中国人によって買われたという。その結果、シンガポールでは不動産価格が急騰、今年に入って、政府は外国人による住宅取得を制限する政策を打ち出した。
中国人富裕層が次に注目したのが、地中海など自然環境の豊かな土地だ。昨年、地中海に浮かぶキプロス島が移民希望者の人気となった。キプロスは日光浴を好む欧米の投資家に注目されて観光客が急増したが、2008年の金融危機で海外投資家が撤退、経済危機に陥った。そこに中国人がこぞって移民のための投資を始め、最近さらに加速している。
さらに今年は西インド諸島にあるセントクリストファー・ネービス(イギリス連邦加盟国)が富裕層に人気を博し、1口40万ドル(約3900万円)の不動産投資商品が飛ぶように売れているという。
日本でも2010年には自然豊かな北海道の別荘や、水のきれいな富士山周辺の土地を購入する中国人が続々来日していたが、今や日本も中国の大気汚染の影響を受ける。距離的にも人の往来の数からも、鳥インフルエンザが海を越えてやってくる可能性も低くない。そのせいもあってか、不動産投資は環境が汚染されていない、空気がきれいで距離も離れている地中海などの島々に向かっている。
※SAPIO2013年6月号