「卵子は老化する」「高齢出産は生まれてくる子供に障害があるリスクが高い」──こうした報道が氾濫し、「高齢出産」への不安が増大している。こうした時代の空気は、女性の妊娠時期を管理しようとする政府の動きまで引き起こした。しかし、妊娠や出産に関する誤解を解き、正しい知識を身につければ、むやみに不安を抱く必要などない。
高齢出産は染色体異常による先天異常のリスクが高いが、それは子供の能力とは無関係。むしろ、高齢出産のほうがプラスになるという調査さえある。
「イギリスのロンドン大学などの専門家たちが、のべ約8万人の9か月児、3歳児、5歳児を調べたところ、20歳の母親から生まれた子供に比べて、30歳、40歳の母親から生まれた子供のほうが、不慮の事故によるケガや入院が少なく、言語の発達や社会情緒的発達の面においても良好であることがわかりました」(出産専門ジャーナリスト・河合蘭氏)
例えば9か月児の場合、出産時20歳だった母親の子供の9.5%が外傷経験を持っていたのに対し、40歳で出産した母親の子供では6.1%のみ。また、推奨されている予防接種の接種完了率も、40歳の母親の子供のほうが高かったという。言語の発達も含めて、高齢出産した母親ほど、意識的に子育てに取り組んでいることがうかがえる。
「この研究の報告者は、高年齢であるにもかかわらず出産することができた親からの遺伝的な有利さを受け継いでいるのではないか、と書いています」(河合氏)
高齢出産が、出産した女性の寿命を延ばすという研究結果もある。ハーバード大学医学部のトーマス・パール教授は1997年に、1896年生まれの100歳の女性78人と、同年生まれで73歳で亡くなった女性54人の2つのグループを調査。すると、40代で出産を経験した人の割合は100歳まで生きた女性のほうが4倍も高いことがわかった。
「老化が遅い人だからこそ40代で出産できたのだとも考えられますが、それだけでないと思います。子供が生まれたことで、その女性が自分の体を大切にするようになった面もあるのではないでしょうか。40代で産んだ人たちは本当に健康に留意していますからね。『子供が成人するまで健康で頑張ろう』と思い、健康診断をきちんと受ける人も多いのです」(河合氏)
※週刊ポスト2013年6月14日号