ライフ

乳がん発覚作家 乳房の再建手術に至るまでの経緯を振り返る

 乳がんになるリスクを減らすため、おっぱいを予防的に切除、再建することを選んだハリウッド女優、アンジェリーナ・ジョリー。日本人女性の16人に1人が乳がんになる現在、こうした「選択」は他人事ではない。『エクソシストとの対話』(小学館)などの著書があるノンフィクション作家の島村菜津さん(49才)もまた、乳がんが発覚し、再建手術を選択したひとり。手術に至るまでの検査とは? 以下、本人の体験談だ。

 * * *
 一般に乳がんの成長速度はとても遅く、数cmに成長するのに10年かかる。

 だが、中には急成長する特殊ながんもあるという。どっちなんだよとつっこみたくもなるが、がんの種類や進行度にもよるものの、しこりの正体は、術後の精密検査で初めて正確にわかる。

 それなら一刻も早く切ってしまおうと手術を申し出ると、乳がん検査をしてくれた医師から、都内のお勧め病院5か所のリストを手渡される。その場で聖路加国際病院(東京)に決めた。

 がん研有明病院(東京)に次いで日本で2番目に多くの乳がん手術をこなす病院で、多けりゃいいというものでもないが、乳がん界のパイオニアとされる乳腺外科医・中村清吾さん(現・昭和大学病院ブレストセンター長)のつくった乳腺外科『ブレストセンター』の評判は、なかなかよかった。

 すると、リストをくれた医師がその場で電話を入れてくれた。

 こうして、切る気まんまんで向かった聖路加での初診の日、検査がまだひと月ほど続くことを知らされてがっかりした。担当医でクリニカルフェロー(研修期間を終了し、認定医を取得した医師)の美しい尹玲花(いんれいか)さんが「まだ切りませんよ」と微笑む。セカンドオピニオンなどという言葉すら忘れていたせっかちな患者を、「まあ、そう焦らず」と押しとどめたかたちだ。

 初日はMRI。『身体のいいなり』(朝日新聞出版)著者の内澤旬子さんも「鉄パイプを持ったヤンキーが外から土管をがんがん襲撃する」音に例えていた。そこで覚悟して臨んだら、装置も進化したのか、音が少々うるさいだけだった。マンモトーム生検という、うつ伏せで胸をマンモグラフィーに挟んだ状態で、より正確な組織を採るという、アクロバティックで、価格もゴージャスな検査(2万1000円)も受けた。

「あの、いじくりまわして、乳がんの侵潤を促進しませんか」

 という失礼な質問に、尹さんは、ただ「いいえ」と微笑む。

「がん細胞は、そんなにやわじゃない」

 と言うと、静かにまた頷く。がん細胞は、正常な細胞から発生し、体の指令を無視して増殖を続ける細胞だという。

 だいたい、がんなんて日本の名称は響きがよろしくないうえに、厚生労働省の資料や保険の規約には、がん(悪性新生物)という物騒な別称まで使われている。まるで『遊星からの物体X』ではないか。

 こちらはがん細胞の性質について、まったく無知なのだから仕方ないのだ。

※女性セブン2013年6月20日号

関連記事

トピックス

SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン