やめてほしいと言われても、法的に命じられても、つけ回すことをやめようとしないストーカー。その身勝手な心理状態が垣間見えるのが、青森県八戸市で2012年4月に起きた事件だ。
無職・西塚章二被告(40才)は、別れた妻A子さんの家族が、長男(10才)に会わせてくれないことを理由に、A子さんの母・B子さん(享年65)を殺害した。
今年5月20日に始まった裁判でも、西塚被告は反省や後悔の言葉よりも、自らの正当性を何度も主張した。
「長男を元妻以上に愛してる」
「ひと目だけでも長男に会いたい」
「長男が自分に会いたいと言ったら、会わせてほしい」
普通に考えれば子供への深い愛情と受け取れる発言も、そうした状況を自分の無責任さが招いたということの自覚と反省がなければ、それは単なる傲慢さにすぎない。そのあまりにも身勝手な動機に、懲役20年の判決が下された。
西塚被告はトラック運転手という仕事を失い、無職に。小遣いほしさに消費者金融で借金を重ねるようになる。そんな夫の姿にA子さんは呆れて、離婚を考え始めていた。
その矢先に強盗、強姦致傷事件などを起こして逮捕され、懲役8年6月の実刑判決を受ける。これが決定的な理由になり、A子さんは離婚を求めた。
だが、西塚被告は首を縦に振らなかった。出してきた条件は2つ。
「年に2回、長男の写真を送ってくること。もう1つは、出所したら、子供に会わせてくれること。この2つを約束したら離婚に応じるというものでした。西塚被告は、その約束をA子さんが受け入れたと主張しています」(地方紙記者)
そして逮捕から1か月後に離婚が成立。服役中、模範的な態度で過ごした西塚被告は昨年11月に仮釈放が認められると、専業農家の両親の元に身を寄せた。
しばらくして、西塚被告が向かったのは、A子さんの実家だった。A子さんと長男の居場所を知らない彼にとっては、A子さんの実家が唯一の手掛かりだったのだ。インターホンを鳴らし、こう言った。
「すみません、A子と子供に会わせてください。連絡先を教えてください」
A子さんの母・B子さんがインターホン越しに返事をする。
「あなたには教えられません」
西塚被告は落胆した声で答えた。
「そうですか…また来ます」
B子さんが断っても断っても、西塚被告は毎日のようにA子さんの実家を訪れた。B子さんは西塚被告の両親にストーカー行為をやめさせるよう連絡を入れたものの、効果はまったくない。
そして12月6日朝9時。西塚被告は、いつものようにインターホンを鳴らした。だが誰も応答しない。玄関のドアには鍵がかかっていなかった。A子さんと子供の手掛かりがあるかもしれない。西塚被告は、そのドアを開けると、家に上がり込んだ。
実は家は留守ではなく、たまたまB子さんが台所にいてチャイムに気づかなかっただけだった。
「なんで、勝手に入ってきたの! 警察に電話するから」
西塚被告の姿に驚いたB子さんが電話に向かうと、その前に身長180cmの西塚被告が立ちはだかった。B子さんの首に両手をかけ、強く絞めつけた。さらに電気コードで首を絞めた。台所の流しから包丁を持ち出すと、それを左の胸に突き立て、別の包丁で、首を切りつけた。
首を絞められたことによる窒息と、出血性ショック。それがB子さんの死因となった。
※女性セブン2013年6月20日号