東京都西東京市の住宅街にある障がい者支援施設「社会福祉法人田無の会 たんぽぽ」では、障がい者に対して一部の職員による暴行、暴言、ネグレクトが横行していた。
こんな職場では、心ある職員も疲弊するばかりだとある職員が訴える。
「あまりに理不尽な言動に心を痛める職員もいますが、逆らうと無視されたり嫌がらせを受けるなど職員同士のいじめが待っている。数人続けてノイローゼになり退職したこともあります。また、志の高い職員ほど嫌気がさして辞めてしまい、虐待があっても見て見ぬふりをする職員が残るんです」
実際、たんぽぽの離職率はこの2年間で5割という高さだ。それでも施設に残ろうとすれば、自ずと理事長ら幹部のイエスマンにならざるを得なくなる。別の職員がこう証言する。
「計画性もなく買うものですから、施設の倉庫は、いつも食材であふれていました。中には賞味期限を何か月も過ぎたものもありましたが、カビの生えたジャムを捨てるにも許可が必要です。上司の指示で賞味期限の切れた食材を利用者に提供することもあったようです」
東京都社会福祉会議が2002年に出した改善申し入れ書でも理事長の“施設私物化”が厳しく糾弾された。今回の報告書でも施設を「事実上の理事長のワンマン経営」とし、その弊害を指摘している。
<職員は理事長およびにT理事(理事長の妻のこと=編集部注)の顔色を見ながら仕事をしている。このため、上司に相談しても我慢するよう求められるなど、相談すること自体をあきらめざるを得ない状況にある>
こう断じた報告書は、事態改善のため、「経営陣の刷新」を提言している。
しかし、報告書が明確に虐待を認定し、厳しく責任を追及するも、施設側に反省の色は見られない。本誌の取材に現在の施設長はこう応じた。
「第三者委員会は外部のかたで、現場に常駐していません。虐待にはさまざまな捉え方があり、すべてが否定的にとれることばかりではない。理事長のワンマン経営かどうか、それはわかりません。今後、検討していくことです。第三者委員会の報告書を検討して今後、結論を出していきます」
施設の運営を指導監督する行政の責任も大きい。東京都は公益通報を受けながら、第三者委員会による調査を求めただけで、公表も告発もせず、自主的な改善を促しているだけだ。東京都福祉保健局障害者施策推進部の担当者はこう語る。
「まずは施設に自主的に改善させる。都としては今後の対応を見守りたい。告発などの対応についても別途、検討したいと思っています」
※女性セブン2013年6月20日号