5月半ば、飯島勲内閣官房参与が北朝鮮を電撃訪問し、序列第2位の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長と会談した。この訪朝の内幕をジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。
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第二次安倍内閣の現職閣僚の一人が、筆者にこう言う。
「古屋圭司拉致問題担当大臣が、まさに自信満々といった口調で、『今回は一気呵成に行く』と言っているのです。安倍首相の側近中の側近と言うべき人が内々にこう言っているのですから、相当に期待がもてそうです」
飯島訪朝を受けて、古屋大臣の所管である拉致問題が一気に進展するであろうことを指していることは言うまでもない。
今回の飯島勲内閣官房参与の訪朝の最大の特徴は、国内では徹底して保秘が貫かれていることだろう。「担当の古屋大臣にさえ、訪朝の予定は事前に伝えられていなかったのが実情です」(官邸中枢スタッフ)
それどころか、事務方トップで警察庁出身の杉田和博官房副長官や北村滋内閣情報官にさえ飯島訪朝は伏せられ、完全にカヤの外に置かれていた。
「事前に状況を知らされていたのは、安倍首相と菅官房長官の2人だけ。それだけ秘密保持は徹底していたのです。その意味では古屋大臣が非常に饒舌なのは、情報が入らない自らの存在を精一杯アピールしたいから。彼は感触ぐらいしか知らないでしょう」(前出の官邸中枢スタッフ)
ちなみに今回、韓国は事前に情報を一切キャッチできなかった。このことに危機感を抱いた韓国は、近々、国家情報院で大幅な人事異動を行なうという。東京の韓国大使館には大物インテリジェンス・オフィサーが送り込まれることになった。それほど保秘は厳しかった。
限られた時間とスタッフではあっても、訪朝へ向けての準備は、入念に行なわれていた。 飯島氏は、「内閣官房参与」という肩書ながら、国際部長の金永日書記、そして北朝鮮序列ナンバー2の金永南最高人民会議常任委員長といった要人と立て続けに会談をもった。 これらの会見は飯島氏が訪朝に踏み切った時点でセットされていたものだった。
「この件に関して古屋大臣がテレビ番組で、『金永南氏との会談は想定外』と発言していましたが、菅官房長官が『何も知らないくせに余計なことを言うな』とカンカンになって怒っていました。こうしたやりとりから考えても、事前に北朝鮮との間で相当に詰めた上で飯島氏の訪朝が実現したことは明らかでしょう」(前出同)
※SAPIO2013年7月号