女子監督による選手へのパワハラ問題や、現職理事によるセクハラ事件など、スキャンダルが相次ぐ全日本柔道連盟。なかでも、日本スポーツ振興センター(JSC)からの助成金を指導実態のない「指導者」が不正受給していた問題は、現在も第三者委員会の調査が続けられている。
6月11日に予定される理事会では、上村春樹・会長の進退に注目が集まるが、本人はいまだ明言を避けている。しかし、全柔連関係者によれば、実は上村体制にはひた隠しにされていたもう一つの問題があるという。
「今回問題になった助成金の一部は、全柔連の強化委員会にプールされていましたが、実は全柔連は10年以上前にも、似たようなスキームで不正受給を行なっていた。シドニー五輪があった2000年、JSCとJOC(日本オリンピック委員会)からの助成金や国庫補助金を不正受給したとして、全柔連は会計検査院からの取り調べを受けたんです。
その手口は、助成金のうち実際に使った金額よりも過大に上乗せしてJOCに報告し、上乗せ分をプールしていたということです。本当は使っていない強化合宿の滞在費や旅費を選手に支払ったことにしたり、同じ領収書のコピーを使いまわして二重に請求したりしていた。現在の上村会長は、問題が発覚した際に強化副委員長を務めており、責任の一端を担う立場にあったんです」
だが当時は、全柔連のほかにもJOC傘下の計11団体で不正受給が発覚したため、公的には、特定の組織ではなく助成金の仕組みの問題として処理されただけだった。確かに当時の報道を見ると、「柔道など11団体、補助金を目的外使用」(読売2000年10月8日付)などとある程度だ。しかし前出関係者は、この問題こそ現在の不正受給問題の原点だという。
「実際には、発覚した不正受給のうち3分の1を占める3200万円が全柔連によるもので突出していた。JSCとJOCに3200万円を全額返還した後には、全柔連の職員が東京地検の取り調べを受けたほどです。にもかかわらず、上村体制の全柔連は、ほとぼりが冷めたあと、別のスキームで不正受給を復活させた。それが今回の問題の本質なんです」
このことについて上村会長に問いただしたところ、全柔連広報委員長より、「事案が昔のことにて詳細不明。上村会長は当時強化副委員長で、本事案を報道で承知しているが、詳細は承知していない。東京地検が捜査に入ったという記憶はない」との回答を得た。
※週刊ポスト2013年6月21日号