アルコール依存症患者はその予備軍(プレ・アルコホリック)を含めると約400万人と推計されているが、専門機関で治療を受けている人は4万人と少ない。
厚生労働省の調査では、お酒の飲みすぎによる事故やがん・脳卒中など病気の治療費、仕事の効率の低下や人間関係の破綻などを含めた損失は約4兆円と推計されている。この状況を打開するため、アルコール健康障害対策基本法成立に向けた機運が高まっている。さらに様々な研究も始まっている。
成増厚生病院・東京アルコール医療総合センターの垣渕洋一センター長に話を聞いた。
「アルコール依存症による問題の1つが自殺との関係です。アルコールの大量摂取によって、うつ病を発症させることがわかっており、実際、依存症患者の約40%はうつ状態です。年間3万人といわれる自殺者のうち、以前は依存症が約5%といわれていましたが、大規模調査により3分の1がアルコール依存気味の働き盛りの男性であることがわかってきました」
アルコール依存症は、ICD10国際疾病分類に基づいて診断する。
■ICD10による診断基準(アルコール・薬物関連障害の診断・治療ガイドラインを一部改変)
【A】飲酒したいという強烈な欲求(病的飲酒欲求)
【B】摂取量のコントロール障害(抑制喪失)
【C】禁断症状(いらいら・不眠・手の震えなど)
【D】摂取量が増える。耐性の増大
【E】飲酒以外の楽しみがなくなる。飲酒に一日の大部分の時間を消費する
【F】精神的・身体的問題がある有害な状況なのに断酒しない
※上記のA~Fの6項目のうち同時期に3つ以上あてはまると依存症と診断される
過去1年間のある期間、6項目のうち3つ以上当てはまると依存症と診断される。依存症になると、手の震えやイライラなどの禁断症状や肝臓障害など身体的障害、仕事や家庭の不和や喪失、経済的困窮や飲酒運転などの法律問題、最後は生きる目的を失うダメージに襲われる。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年6月21日号