投手は打席に立っても、漫然とボールを見送り三振する――プロ野球を観ていると、そんなシーンに、度々遭遇する。「もっとやる気を見せろ!」「いくら大量リードしたからといって、観客に対して失礼だ!」とは、よく聞く言葉だ。スポーツライターの一人が語る。
「交流戦になると、特にこの傾向は顕著ですね。たとえば、4月18日のDeNA対日本ハムでは、4回1死一塁二塁のチャンスの場面で栗山(英樹)監督は併殺打を怖がり、9番・投手の谷元(圭介)に三振をさせた。打席前に声をかけに行き、打席中で打つ素振りをすると、もう一度谷元を呼び寄せた。そのあと、見逃し三振ですからね。普段打席に立たず、打撃練習もしていないパ・リーグの投手は無理に打ちに行くとマイナスの効果になるんです」
これは、ある意味、作戦の一つといえるが、もう一つ大事な理由があるという。
「無理に打ちに行き、打球が詰まると、手がシビレ、それが次の回の投球に影響するのです。実際、5月25日のDeNA対ロッテ戦で、非常にわかりやすい例がありました。7対0となった5回表、通常なら投手は打ちに行かず、見送り三振です。それなのに、ロッテの先発・成瀬(善久)は初球を強振。結果は投ゴロでしたが、成瀬が顔を歪め、左手を上下に振った。打球が詰まったことで、手にシビレが走ったのです」(同前)
その裏、あまり間隔もなくマウンドに上がった成瀬は、コントロールがつかない。4番・ブランコに3つボールを続け、カウントを取りにいったストレートを場外に運ばれる。続く、中村紀洋は打ち取ったが、6番・金城龍彦にもレフトへソロアーチを打たれた。6回にも、2点を奪われ、成瀬は降板した。
「4回までノーヒットピッチングをしていましたから、打ちに行った代償の大きさがわかるでしょう」(同前)
結局、9対4でロッテが勝ち、成瀬は勝利投手になったが、打席で振りにいかなければ完投でき、余計なリリーフを使わずに済んだ可能性もある。
セ・リーグの投手ならまだしも、普段打席に立たないパ・リーグの投手の場合、このような事態が充分に起こりえる。本業に専念するため、投手はあまり振りに行かないのだ。だからといって、すべての打席を見逃し三振するわけにもいかない。交流戦も終盤に差し掛かった。投手の打席と振りに行った次の回に注目してみるのも面白いかもしれない。